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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第26章 牙を剥く悪魔


 燃え盛る炎に包まれた船を、白ひげ海賊団が見送る。
黙祷を捧げる者。
ただただ眺める者。
顔を歪めて背を向ける者。
「ビスタ・・・」
妻のカレンが少しだけ不安そうに隣に並んだ。
料理長を務める彼女は、船内の惨状を知らされていない。
ただ、以前弔ったかやの件と、夫のビスタの纏う空気から想像はついていた。
普段、キッチンの仲間達からは『ママ』と呼ばれ、慕われている肝の座ったカレンだが、夫であるビスタの前では一人の女性であり、ビスタに取っては最愛の存在だ。
「暫くは、おれと共にだな」
上陸する際には、一人で行くなとは言わずにそう言った姿は頼もしく、カレンを笑顔にした。





 その様子をひたすら舞い降りる雪の間から、
観察する女が一人。
『見つけた・・・』
唇が音にならない声を象る。
そしてその唇で優美な弧描き、自身の人差し指を折り何かを考えるように添えた。
女の目が細められた。
と。
燃え盛る炎をかき消すように、
白ひげ海賊団の弔いを嘲うかのように、
猛吹雪を起こして去っていった。



「雪女・・・か」
それを確認したイゾウがぽつり。
「去った・・・かい?」
イゾウに確認するようにマルコが言えば、
「何、やっぱりなんかいたわけ?」
ハルタが苛立つように空を睨む。
「能力者か?」
「あぁ、羽の生えた雪女だぜ」
サッチの質問に余裕を見せれば、マルコが言った。
「敵わねぇよい、見聞色ばっかりは」
その言葉に口の端を上げれば、一瞬の内に吹き荒れた雪を踏みつけた。
「俺は、ライを手にかけた奴を許さねぇ」
「あぁ」
頷くマルコ。
「ゾイドはお前に任せる、だが、」
イゾウの目に狂気にも似た怒りが宿る。
「ライをやった奴は俺がやる」
「わかってるよい」
マルコの言葉に、隊長達も頷いた。
誰もがイゾウの気持ちを理解していた。
「俺達の仲間に」
ラクヨウが、殺気を放つイゾウの肩に腕を回した。
「手を出したら」
ジョズが口の端をニヤッと上げた。
「どうなるか」
サッチが沈んでいく船に一瞬目を伏せ、仲間達を射抜くように見た。
「「「知らねぇはずねぇよなぁ」」」
隊長達の言葉に、仲間達が頷けば、
白ひげはニヤリと笑った。
悪魔王ゾイドとの対決は刻々と迫っていた。
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