第26章 牙を剥く悪魔
がちゃ。
ビスタが、マルコを振り返った。
『初めまして、沙羅』
電伝虫が笑顔を浮かべた。
「ゾイドか」
応えるのはマルコ。
それに気を悪くする様子もなく、ゾイドは話し続ける。
『不死鳥は随分と雛鳥に甘いらしい』
「ふざけんじゃねぇよい」
淡々と応えるマルコの反応が面白かったのだろうか?
ゾイドが喉鳴らして笑う。
「用件は?」
『さすがは、冷酷非情な不死鳥だな』
「・・・」
マルコの目の奥が微かに揺れた。
この地獄絵図のような光景に、動揺を見せないマルコを、暗に同じ穴の狢(ムジナ)だと言うゾイドの狡猾さに虫酸が走った。
その乱れた心の合間にゾイドは言葉を投げる。
『プレゼントは気に入ってくれたみたいだね』
「!!」
マルコが僅かに押し黙ったのを見逃さないゾイド。
胸の中に押し止めたままの沙羅の肩が揺れた。
『泣くほど、』
マルコの腕の中に守られた沙羅を引きずり出す言葉。
『よかったみたいだね』
悪魔は牙を剥く。
「っ!何でっ!!何でっ・・・」
ゾイドの笑い声に、沙羅が怒りを超えた感情を露わにし、言葉を詰まらせた。
「沙羅、話の通じる奴じゃねぇよい」
今にも電伝虫に摑みかかりそうになる沙羅を押し留め、視界を遮ろうとするマルコ。
が、先程まで青ざめて震えていた沙羅は、両親の敵を前にして、決して揺らぐことのない憎悪を糧に己を立て直した。
『気の強い女も嫌いじゃない』
沙羅が反応を示したことで、ゾイドの顔をした電伝虫の目が細められた。
「何で殺したの?!何でっ!?」
『沙羅の代わりだよ』
「 」
瞬間、言葉を失い、表情が凍りつく。
『君の』
『代わり』
ゾイドは諭すようにゆっくりと言葉を繰り返した。