第26章 牙を剥く悪魔
そんなマルコの思いは届かない。
夢の中の沙羅は、何かに導かれるように船内へと向かう。
やめろ
行くな
やめろ
見るな
マルコは必死に追いかける。
やめろ!
沙羅が扉に手をかける。
開けるな!!
扉がキィィィ・・・と鳴る。
やめろ~~~~~~~~!!
「?!」
体がびくりと跳ねて、目を見開いた。
「マルコ???」
「沙羅?」
「大丈夫?夢でも見たの?」
瑠璃色の瞳が心配そうに揺れた。
「大丈夫だ・・・?!・・・」
『大丈夫だよい』と言いかけて、ゆっくりと立ち上がった。
寝起きとは思えない程、鋭い視線が前方を見据えた。
空も海も変わらずの青さだ。
だが、進行方向に何かがある。
まだ他の者は気づいていない。
いや。マルコと同じように気づいた者が二名。
『オヤジ?』
『イゾウ?』
白ひげは言わずもがな。
イゾウはひけらかさないが、白ひげ海賊団随一の見聞色を誇る。
その二人が反応を示した事で、甲板はにわかに騒がしくなる。
「マルコ・・・」
僅かに遅れるもマルコの只ならぬ様子と海からの声に事態を悟った沙羅は不安げに顔を歪めた。
「離れるなよい」
そんな沙羅を伴い、マルコは甲板の中央付近にいる白ひげの元へと歩き出す。
途中、すれ違う者に戦闘準備を促していく。
二人が白ひげの元に付く頃には、空から白い物が舞い降り、視界は薄曇りとなり始めた。
「オヤジ」
マルコの声に頷きながら、顔を前方に向ける白ひげ。
「何か仕掛けて来やがったな」
「あぁ、だがゾイドは・・・・・・いねぇ」
見聞色を前方に集中させて、マルコは白ひげに確認するように言った。
それに頷き返しながら、白ひげはニヤリと笑う。
まだまだ伸び盛りの息子は、武装色だけでなく、見聞色をも極めようとしているらしい。
その横では、涼しい表情のままに前方を見据えていたイゾウが指示を出す。
「左舷側、来るぜ」
それからマルコと小さく言葉を交わして、何かを頷きあう。
「来るぞ」
ジョズが鋭い声をあげた。
頼もしい息子達に、白ひげはゆったりとしたまま、“それを”迎えた。