第25章 二つ島~距離~★
「ま、マル・・・っ・・・」
マルコが何を求めているのか、よくわからず沙羅は戸惑いを示した。
が、言葉を紡ごうとした舌に絡められた親指に意図を察した。
薄らと朱を浮かべながらも、マルコの親指を舐める。
睨み上げるようだった視線は伏せられ、熱に浮かされた瞳が忙しなく揺れる。
その一連の様を、マルコはじっ・・・と観察する。
不慣れな体制に震える体。
拙い舌使い。
当たり前だ。
沙羅は、男慣れしていないのだ。
初めて知る、初めての行為。
それでも、マルコの求めるままに辿々しくも懸命に応えてくれる沙羅。
そんな沙羅にどこまで求めていいのか。
沙羅は娼婦とは違うのだ。
己の欲望のままに抱いていいわけではない。
沙羅が嫌がることはしたくない。
そう思いながら、黒い欲望が渦巻く。
今すぐにでも、指ではないものをしゃぶらせたい。
想像するだけでマルコの体の中心が熱を持った。
「っ・・・ン・・・」
そんなマルコの耳に届く、くぐもった声。
苦しげに、沙羅の咽が嚥下した。
「!大丈夫か?・・・やりすぎたよい」
マルコは口内を傷つけないように慎重に親指を引き抜くと、その指で沙羅の口内から溢れた透明な液体を拭った。
まだ自分との深いキスですら、慣れていない沙羅に無理をさせた。
その罪悪感に顔を歪ませたマルコに、
苦しかったはずなのに、大丈夫と頭を横に振る沙羅が健気で可愛くて愛おしい。
“焦るな”
手を伸ばさなくても、触れられる場所にいる沙羅。
今までは手を伸ばす存在だった。
けれども今、沙羅は隣にいる。
少しずつ慣れて、いや、慣らしていけばいい。
そして、少しずつ自分色に染めて、染めて、染め上げていけばいい。
幸い、沙羅は誰の癖もついていない。
純真無垢と言ってもいい程に、心も体も素直で清らかだ。
白い色は染まりやすい。
じっくり教えて、染め上げれば、自分好みの色に染まるだろう。
そう考えている、マルコはかなり妖しく危ういのだが、さておき。
マルコは、自身にそう言い聞かせた。