第23章 二つ島~危機~
沙羅が危機を迎えるよりも、少し前。
マルコ達は久々の宴会を満喫していた。
自由な海賊とはいえ、約1500人が共に暮らせば様々な問題が起こる。
それを統括するのが各隊の隊長達だ。
それぞれに苦労がある。が、今日ばかりは一切を忘れた宴会だった。
そこへ、店員が窓を開けるためにやってきた。
「隊長さん達、今日は月蝕なんですよ」
笑顔を浮かべながら、店員はほとんど欠けている月を示した。
「・・・」
酒を口に運びかけたマルコの手が固まった。
サッチの笑い顔が固まる。
イゾウが電伝虫を呼び出した。
プルプルプル、プルプルプル、プルプルプル・・・
「でねぇっ!」
「でないっ」
イゾウに続き、数名の隊長が操舵室や見張り台、己の隊を呼び出すも誰も応答がなかった。
「っくそ、マル・・・!!」
サッチは応答のない電伝虫を睨みながら、『マルコ、先に行け!』と言おうと視線をずらした。
マルコは、既にいなかった。
残るは開け放たれたままの窓に外の、一枚の蒼い羽根のみ。
「・・・」
サッチは一瞬口元に笑みを浮かべ、が、すぐに動き出した。
「ナミュール、先に行ってくれ」
ナミュールは魚人族だ。船を使うことなく直接モビーディック号へ行けると判断したサッチは声をかけた。
ナミュールも頷くと、すぐに海へと飛び込んだ。
「俺達も先に出るぜ」
イゾウが、半数を引き連れて慌ただしく店を出て行く。
「・・・わかった、オヤジ、任せてくれ」
それを見送りながら、今まで白ひげの安否確認をしていたジョズが電伝虫をおいた。
「オヤジは無事だ!モビーを任された、行くぞ!」
その言葉に、残りの者が威勢よく反応し次々に店を出て行く。
「あれ?皆どうしたの?」
そこへ、トイレから戻ったハルタが一人。
「モビーが攻撃されている!」
最後の一人、ブレンハイムはそれだけ言うと走り出した。
「・・・で?僕が払うわけね・・・」
ハルタの呟きに応えるのは、苦笑の店員のみだった。