第22章 二つ島~試練~
それから数日後、マルコは酒場で情報屋と会っていた。
沙羅の敵の情報は得られなかったが、
ゾイドの動向を得る事はできた。
ハレム島での闘いの後、全ての幹部が召集され、その半数が残り、半数がまた散っていったのだと。
その各地に散った幹部は黒髪の若い女を捜している。
沙羅のことだ、とマルコはすぐに気がついた。
やはりヒョウが叫んだのは脅しではなかったのだ。
マルコは苦々しい思いで、その情報を聞いた。
そんなマルコに告げられた、もう一つの情報。
ゾイドとの関連は明らかではないが、黒髪の若い女が、各地で行方不明になっているらしい。
その話を聞いたマルコはその淡々とした表情とは裏腹に、不快感を覚えすにはいられなかった。
白ひげ、カイドウ、ビックマムと並び称されるゾイドの異常さは群を抜いている。
ハレム島での遺体の山が物語るように、恐らく行方不明の女達も、もう生きてはいないだろう。
善人面するつもりはない。
沙羅には見せてはいないが、家族を守るために必要であれば命を奪うこともある。
拷問も行う。
だが、ゾイドにはそれがない。
自身の快楽のために、命を奪う。
そのゾイドの異常な興味が、今、沙羅に向いている。
そして先日の夜島の桜並木で、沙羅の口から語られた連日の悪夢の話。
本人は気づいていないが、沙羅は時々予知夢を見ることをマルコは昔から知っていた。
マルコは、自身の心が泡立ち始めるのを感じた。
『まさか、悪魔王と戦争でもするつもりですかい?』
情報屋の言葉が、耳を右から左に抜けていく。
フェイクもこんな、気持ちだったのだろうか。
いや、頼る者も相談する者もなくたった独り、恋人を人質に取られたのだ。
その恐怖、失うかもしれないと言う恐怖は計り知れないだろう。
情報屋の質問には答えずに、どちらとも取れるような笑みを浮かべ料金を払うとマルコは酒場を出た。
今すぐに、沙羅を抱きしめ存在を確認したい。
幸い、沙羅と会う約束をしている。
マルコは足早に待ち合わせ場所に向かった。