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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第22章 二つ島~試練~


引き寄せられた沙羅の手の甲に、
マルコの唇が優しく触れる。
「っ・・・」
息を詰まらせた沙羅の次の反応を伺うように、じっと見つめてくるマルコの瞳はアルコールで僅かに熱っぽさを内包している。
優しい眼差しの中に、獰猛な肉食獣が獲物を品定めするような危うさを感じさせるそれ。
体がゾクリとするほどに危険な色気に、沙羅はマルコの瞳から目線を外すことができない。
「・・・」
「・・・」
見つめ合う二人の間をひらり、ひらりと花弁が数枚静かに舞い降りていく。
そんな僅かな時間が途方もなく長い時に感じた。
「・・・」
「・・・」
風が木々を揺らす音だけが、沙羅の耳に聞こえた。
言葉を忘れた訳ではないけれど、何と言ったらいいのか言葉を選べない。
ふと気がつけば、重ねられていたマルコの手が、沙羅の手の内をなぞるようにゆるゆると親指、人差し指、中指・・・と動いていく。
その事に、少しずつ手の平に触れる空気の感触で沙羅はやっと気がついた。
その手がすこしずつ手の甲に回り、遂にはマルコの手に掬われるように支えられた沙羅の手。
手の平にあった桜の花びらが、風にさらわれて飛んでいくのを沙羅はぼんやりと見送った。
視線も手も、そして心もマルコだけに集中していた。
「もう少し・・・」
再び、言葉を発したマルコの口元をじっと見つめる沙羅。
その瞳に映るのは、再び引き寄せられていく自身の手の平。
「甘えて欲しいよい」
マルコの唇が、
沙羅の、
手の平に触れた。
「・・・・・・っ・・・」
ビクリと体が震えて、顔がどうしようもなく熱を持つ。体温が一気に上昇し、じわりと汗が滲むようだ。
触れるか否かの位置に唇を残したまま、マルコはじっと沙羅を見つめた。
その目が言う。
『わかったかよい』と。


感情が

高ぶりすぎて

五感が、

鈍る。


熱に浮かされたように視界が霞み、マルコの顔がよく見えない。
耳に入ってくる風の音すらも遠い気さえする。
嬉しくて
嬉しくて
嬉しくて・・・
もう、どうしたらいいかわからない。
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