• テキストサイズ

海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第22章 二つ島~試練~


 川の流れる音と風に揺れる木々の音。
その中をゆったり歩く二つの足音。

 モビーディック号に一人戻るという沙羅。
それを聞いたユージンは『送ってこい』とマルコを送り出した。
正確には一人で大丈夫だと言う沙羅と、それを心配しながらも(一人では帰せねぇと猛反対)、白ひげに何かあったらと身動きできない不器用なマルコ。
それを半分面白そうに、半分呆れながら見ていたユージンがマルコを『俺がいるのに、不安かぁ!』と追い出したのだが。

「すごい・・・」
風に揺れて絶え間なく桜の花びらが舞い降りてくる。
万年桜と言われてはいても、これから咲き始めようとする可愛らしい蕾と今まさに満開を迎えた美しい花々、そして地へと還りゆく花びら。
並び立つ木々の中で始まりと終わりが混在した夜桜は、幻想的な空間を作り出していた。
その光景にうっとりとしながらゆっくり歩を進める沙羅。
その横を常とは違い、寛いだ柔らかい眼差しのマルコが浴衣の沙羅を気遣うように並び歩く。
交わす言葉はなく、時々視線を交わしながら、時々舞い降りる花びらを示しながら、静かに歩んでいく。
十六夜(イザヨイ)の月に薄雲がかかり、咲き誇り舞い散る桜を通して、ほのかな光となって二人を見守っていた。
「・・・・・・」
目の前にはらりと降りてきた花びら。
その儚さに思わず、片手で掬うように受け止め、そこでデジャヴのように悪夢を思い出した沙羅の歩みが乱れた。
「どうかしたかい?」
マルコの問いに、沙羅は作り笑いを浮かべて誤魔化した。
その作り笑いは、先日の過度な笑みを彷彿させた。
「・・・」
マルコの目が微かに細められる。
沙羅は何かを恐れ、悩んでいる。
それを解決できるのかはわからない。
それでも沙羅の心を少しでも軽くしたい。
軽くできないとしても、心に添いたい。
話さないのではない。
話せない繊細な胸の内を、どうしたら話してくれるだろうか。
マルコは切なげに沙羅を見つめた。

“俺はずっとそばにいるよい”

マルコの体が自然と動いた。
/ 366ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp