第22章 二つ島~試練~
「グッ・・・ガガガ~!!」
特徴的な笑い声とともに沈黙を破ったのはユージンだった。
「鼻ったれが言うようになったじゃねぇかぁ」
「・・・」
マルコは目を僅かに見開き、そして小さく溜め息をついた。
どうやら試されたらしい。
『いきなり悪かったなぁ』と沙羅を解放したユージンはマルコのしかめっ面をにやにやと観察していた。
その表情はどうみても、まだ悪巧みをしている顔だ。
マルコは身構えた。
「マルコぉ」
「っよい」
条件反射で背筋が伸びる。
「いい男になったじゃねぇかぁ」
ユージンは急に目元を緩ませると、マルコに徳利を差し出した。
それを見て、白ひげも口の端を上げてニヤリと満足そうに笑った。
それを見たサッチは、一人得心が行った。
この一連の行動は、マルコの覚悟を確認する物だったのだと。
『ここにいる全員を納得させろ』
あの会議の日の笑みを見れば、白ひげがマルコの覚悟を受け取ったのは言わずもがな。
だが、同時にイゾウの覚悟も認めたのだ。
沙羅を大切に思う“兄”として、自分ではない男に沙羅を託せるか否かを見極めようとするイゾウの覚悟をも白ひげは認めた。
そのためにユージンにマルコを試させたのだ。
本能的に恐れ敬うユージンを前にしても沙羅を守れるのか、と。
サッチはちらっとマルコを見た。
“お前、大丈夫か?”
もしかすると全隊長が何かしら試練を与えて来るかもしれない。そう思ったサッチは僅かにマルコが気の毒になった。
それでも沙羅を欲すると言う事は、この程度は想定内なのかもしれない。
ユージンと対等に酒を酌み交わすマルコの表情は自然であり、少し悔しいが、余裕すら感じたのだった。