第22章 二つ島~試練~
思い出すと未だに、目眩のする数々の苦い経験にマルコとサッチは頭痛を感じずにはいられない。
と、そこへ人の気配が近づいてきた。
「オヤジ様、沙羅です」
驚く二人を可笑しそうに眺めながら、白ひげは入室を促した。
部屋に入ってきた沙羅に
白ひげは目を細めて笑い、
マルコとサッチは視線を奪われ、
ユージンは見惚れた後に、沙羅に夢中な二人をそれはそれは楽しそうに眺めた。
「グララララ~思った以上に似合うじゃねぇか」
「本当に?」
「あぁ、お前ぇによく映えらぁ」
「ありがとう、オヤジ様、大事にするね」
白ひげの言葉に、嬉しそうに笑いながら、顔をほんのりと赤く染め、恥じらう所作が何とも言い難い色香を放つ。
子供のような愛らしさと、滲み出る女性らしさが混じり合い不思議な魅力を醸し出していた。
さらに、常とは違う装いが沙羅を、より一層引き立てる。
夜桜を描いたのだろう。
藍色にぼかしたと花弁が描かれた浴衣に、柔らかな黄色の帯が月のようだ。
白ひげとの会話から察するに、いつの間にか用意してプレゼントしたのだろう。
白ひげに何かを手渡し、ユージンと挨拶を交わし、お酌をこわれた沙羅をマルコはじっと眺めた。
「美味ぇ~、やっぱり女についでもらうと違ぇなぁ」
上機嫌のユージンは、その勢いのままに沙羅を引き寄せるとそのまま腕の中に囲ってしまう。
沙羅は困ったように笑いながらも、真面目な性格故に元二番隊隊長であるユージンに否とは言えない。
それを見抜いているのだろう。
ユージンは徐に、ゆるゆると体に手を這わし始めた。
始めは二の腕あたりを撫でる手。
それがじわじわと降り、素肌を味わう様に沙羅の手に伸びた。
「・・・」
沙羅は僅かに目を伏せながら瞬かせた。だがその視線はマルコ達を見ない。
それから暫し、沙羅の手を撫でていたユージン。が、再びじわりじわり移動し始めたその手が浴衣の合わせの部分に伸びる。
「ユージン、それ以上は、よしてくれよい」
そう言ったマルコの目には冷静な殺気が込められていた。
「俺に、そんな口聞くとはいい度胸じゃねぇか」
酒に酔って僅かに血走った目が、マルコを睨んだ。
「・・・」
「・・・」
二人は暫し睨み合った。