第22章 二つ島~試練~
そんな様子の沙羅をイゾウはくつりと楽しそうに眺め、サッチは真剣な顔で言った。
「沙羅ちゃん、好きだ、俺と結婚しよう!」
「え?!」
白ひげの腕から顔を上げた状態のまま、固まる沙羅。
「やめとけ、サッチは変態だからな」
イゾウが絶対零度の微笑みを浮かべてサッチを凍らせた。
「お前ぇに沙羅はやらねぇよい」
マルコがそれを放り投げるように退かすと、沙羅の横に立った。
「マルコ、お前はどうなんだ?」
隊長達が口々に沙羅への愛を宣言した中に、マルコだけが含まれていなかった。
ジョズが茶化すように、だが、その眼力は凄まじい圧力を放つ。
マルコはジョズを静かに見返し、穏やかに笑った。
「俺も、大好きだよい」
沙羅をじっと見つめる視線は、甘さを存分に含む。
まるで砂糖をなめさせられた気分だ。
沙羅への気持ちを再確認したジョズは苦笑い。
ナミュールは、あまりの甘さに耐えきれず俯いた。
フォッサの口からは葉巻が落ち、そのまま固まった。
“公開告白しやがった”
顔に出さずとも、数名の隊長は驚き、次いで沙羅の反応を伺った。
頭の中では、真っ赤になりながら可愛らしい反応を示すに違いないと思いながら。
はたして、白ひげの腕に抱きついていた沙羅が、居住まいを正して、振り返った。
「ありがとうマルコ、皆、大好き!」
「「「・・・」」」
僅かに頬を染めつつ、嬉しそうに笑みを浮かべる沙羅の反応は、家族に対するもので、恋のような甘さはない。
むしろ・・・塩ではないだろうか。
ハルタは口からそれが出ているかのような表情を浮かべた。
イゾウは耐えきれずに豪快に笑い、いつの間にか解凍したサッチは『大量の砂糖と塩少々だ・・・』と呟いた。
その中で当人のマルコだけが、沙羅の反応を予想していたのだろう。
小さく溜め息をつきつつ、柔らかな笑みを浮かべていた。
そんな様子を白ひげが可笑しくも愛しむように眺めていた。