第22章 二つ島~試練~
双剣と、大鍋を振るうサッチの筋肉質な腕。
そして、鍛え上げた上半身を無造作にさらして、イゾウやサッチ達と肩を組み、じゃれ合うように達成感を分かち合っているマルコ。
常にオヤジへの忠義を誓うように、誇らしげにさらされている胸元を縁取る羽織は今はない。
筋肉隆々というわけではない。
だが、武装色の覇気使いとして、己の体を用いるマルコの肉体は一切の怠惰がない。
見るからに露骨な体つきではなく、その皮膚の下に秘められた力を動物に例えるならば、豹のようか。
そんなしなやかな肉体は、何とも言い難い色気を纏い、沙羅の心を乱した。
何となく恥ずかしく、そして寂しい。
沙羅はマルコ達から視線を外すと、その光景を見守っていた白ひげの腕に抱きつくように、もたれかかった。
「グララララ~、どうした、甘ったれかぁ?」
「・・・・・・、うん・・・」
長い沈黙の後、頷いた沙羅を白ひげは何も言わずに優しくなでる。
耳には相変わらず、マルコやサッチ、ラクヨウ達の声が届く。
顔を埋め(ウズメ)きゅっと白ひげの腕を抱きしめると寂しさが和らいだ。
白ひげの大きな手が心地よい。
「オヤジ様・・・」
「うん?・・・」
そこで、白ひげは沙羅に気づかれないように目配せした。
沙羅の背後にはいつの間にか隊長達が揃っていた。
「オヤジ様・・・」
「ん?・・・」
何かを口にしようとしながら、思うように纏まらない様子の沙羅を急かすことなく、白ひげは変わらずなで続ける。
「私・・・」
沙羅はまた、白ひげの腕をきゅっと抱きしめた。
「私・・・、皆がすごく好きなの・・・」
「「「!!」」」
「あんなかっこいいお兄ちゃん達、他にいないよね」
「「「!!」」」
「私・・・幸せだよ」
「「「!!」」」
「世界一のオヤジ様と、世界一のお兄ちゃん達がいて、家族がいて、私幸せだね」
「グララララ~」
白ひげは目を細めて笑った。
「ありがとう、大好き!」
そして、ぎゅっと白ひげに抱きつこうとした瞬間、
「「「俺達も大好きだ~!!」」」
と、口々に叫ぶと二人を囲むように抱きしめた。
予想だにしていなかった状況に、目をこぼれ落ちる程に見開き、そして真っ赤になった沙羅。
まさか、聞かれていたなんて。