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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第21章 半端な覚悟ではない


黎明の空が少しずつ、明けていく。
天と地の境目に浮かぶ二つの島。
その二つの島の間から生まれる淡い光が、夜を残す天へと昇っていく。
それはだんだんと空を、天を紫へと染めていく。
「・・・・・・」
沙羅の頬をしっとりとした風がなで、何となく視線上げればマルコもまた、沙羅を見下ろしていて、
ふっ・・・と目元を綻ばせた。
僅かの間。
どちらからともなく、視線を戻すと・・・。
柔らかくも温かい光が、天を島を、海を照らし出す。

“!”

海が、波が伸びをするようにゆっくり揺れた。
『オハヨウ』『おハヨウ』『アサだネ』
生命が一斉に芽吹くかのように、海達が沙羅に声をかけた。
『おはよう、みんな』
それに笑顔で返しながら、それでも視線を外せない。
眩い(マバユ(イ))光が、沙羅の瞳を一瞬、煌めかした。
曙色の太陽が、島と島の間から恥ずかしそうに顔を出す。
普段肉眼で捉える事の出来ない太陽も、今だけは優しく輝く。
その優しい光に照らされた世界は、やはり柔らかい空気を纏い、優しい色彩を醸し出す。
「・・・」
僅かに沙羅の目尻に涙が滲む。
忘れられない憎しみがある。
生きることが苦しい時もある。
それでも、こんな優しい世界を見ることができてよかった、“生きていてよかった”。

沙羅の目尻からこぼれ落ちる涙に、マルコは何も言わず。
視線も動かさずに横目で捉えるのみ。
動いたのは微かに弧を描く口元のみ。
再開した時に、約束した。
世界中にある、美味しい物、楽しい町、美しい物や場所を“一緒に”見ようと。
これはそんな約束の一つなのだ。
沙羅が喜んでいて、
その姿を見ることができる。
それが、マルコには嬉しかった。



 朝食の下準備をほぼ終えて、同じように朝日を眺めていたサッチは、その清々しい朝と相反するどんよりとした顔のトシの頭をくしゃりと撫でた。
「朝っぱらから、しけた面すんなよっ」
「・・・サッチ隊長」
今にも泣き出しそうな表情に、サッチは苦笑いをした。
「取られちまったな」
目線を上に向ければ、昇った朝日に照らされた二つの島を、時々指し示しながら笑い合う二人。
「俺、じゃないってのはわかってるんす、けどっ・・・」
そうして、沙羅への思いを語り出すトシに相槌を打ちながら、サッチの心はそこにはない。
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