• テキストサイズ

海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第21章 半端な覚悟ではない


『マルコ隊長~!起きてますか?!』
一番隊のトシの声が聞こえた。
驚いた沙羅は、僅かに緩んだマルコの腕から即座に逃れ、残されたマルコはその腕をだらりと床に落とした。
『マルコ隊長~起きてくださ~い!』
ドンドンとドアをたたき続けるトシに、マルコは怒鳴りつけた。
「うるせぇ!!ちっとは回りの迷惑・・・」
「まもなく島に着きます!!」
マルコの言葉を聞くことなく、声に反応したトシは勢いよくドアを開け、用件を告げると、走り去った。
その際、沙羅にもちゃかりと挨拶をし、『朝日が綺麗だからすぐ来て下さい!』と沙羅を連れ去ったのであった。
「・・・」
額に浮かんだ青筋は、あまりにも予想外の展開に溜息とともに消え失せた。
明日からは部屋に鍵をかけてやる。
マルコは心に誓うと遅れること僅か、甲板に向かった。

「・・・・・・」
視線の先には、まだ天には夜を残しつつ、地平線は薄らと明るくなり、黎明を迎えた空が見える船首。
が、いるはずの二人がいない。
ゆっくり反対側を見遣れば、案の定、逆方向にいる二人。
相変わらず、頼りにならないトシだ。
が、マルコにとっては好都合。
音もなく近付くと、背後から声をかけた。
「朝日は反対側だよい」
「!!」
「!?きゃっ」
言うが否や、驚く沙羅を片手で軽々と抱き上げると、片手を不死鳥にし、見張り台よりも更に、高く飛びあがり、マストに垂直に交わるヤード(*)に立った。
片手は変わらず沙羅を抱いたままだ。
それに対して抵抗はないが、下を向いて目線を合わせようとしない沙羅。
その黒髪は下に流れつつ、僅かな上昇気流によりふわりふわりと舞い上がる。
それがマルコの体や顔をくすぐり、心までくすぐったくなる。
「沙羅」
くっくっと笑いながら、名前を呼べば、黒髪から覗いていた片耳が、“より”紅くなる。
きっと、先程のことを思い悩んでいるのだろう。 
本当に可愛い。
今すぐに続きをしたいところだが、ここの朝日は確かに美しい。
「見てみろ」
そうして、導くように太陽の方を示せば、沙羅は顔を向けた。
「・・・・・・!」
息を飲み、呼吸を止めた沙羅。

*帆を張る横柱の事
/ 366ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp