第21章 半端な覚悟ではない
マルコは今にも暴れ出しそうな自分自身を宥めるように、ゆっくりと目を伏せ、恐る恐る見開いた。
だが、再び沙羅を見上げるその瞳には、隠しようのない色欲が浮かんでいた。
その瞳のままに、マルコはじっと沙羅を見つめた。
きっとこの状況に、戸惑っているのだろう。
戸惑ってはいるが、嫌がっている様子はない。
男女のことに関しては、鈍感で幼い沙羅だが、この状況がどういう意味を持つから分からないほど無知ではないだろう。
それは、つまり・・・。
“期待しちまうよい”
自分が沙羅を思うように、沙羅も・・・と。
そんな都合のいい話はないと頭ではわかっている。
それでも、思わずにはいられない。
“沙羅、お前ぇが欲しい”
その思いを瞳に乗せ、マルコは探るように、沙羅をじっと見つめた。
瑠璃色の瞳は、変わらず潤んだままに揺れている。
拒絶、恐怖、嫌悪、そういった感情は読み取とれなかった。
このまま・・・。
このまま、拒まれないのなら・・・。
マルコは震えるように息を吐いた。
高ぶる感情に、熱を持ち始めた己自身。
渇いた喉が、水を欲するように体中の細胞という細胞が沙羅を渇望した。
欲しい。
沙羅が、欲しい。
今まで何度となく思い、
その思いの回数だけ自分を堕とした。
逃がさない。
男として見て欲しい。
自分のモノになれ。
そう思い、沙羅を女として慕う家族を牽制しながら
その実、嫌われ者の自分が愛されるはずがない。
そう無意識に自戒してきた。
だが、白ひげに言われて気がついた。
海賊が欲しいと思って何が悪い。
欲しいものは、欲しいのだ。
例えそれが心であっても、
欲しいものは、奪う。
それが、海賊であり、
白ひげ海賊団
一番隊隊長
不死鳥マルコでもあった。
軽く体を起こしながら、沙羅の首に回した腕を僅かに引き寄せる。
沙羅の吐息が、マルコの唇に触れた。
マルコの瞳と沙羅の瞳が重なる。
マルコの吐息が、沙羅の唇に触れる。
「・・・」
「・・・」
暫し見つめ合う二人。
探るような、誘うような視線のマルコ。
恥じらうような、苦しそうな視線の沙羅。