第21章 半端な覚悟ではない
「・・・え?・・・と・・・!!」
憮然とした顔のマルコに伸びている自分の腕。その手のひらに感じる体温が夢ではないと、物語っていた。
沙羅の瞳がこぼれ落ちるかと思うほど見開かれ、瞬間的に頬を真っ赤に染めた。
「・・・ッア!」
自分の行いを自覚した沙羅は素早くマルコから離れようとした。
が、それを逃すマルコではない。
自分の頬から離れ、逃れていこうとする腕を掴み、もう片方の手で腰に手を回し、軽々と自身の上に引っ張っり上げた。
「っわ・・・!!っ・・・」
色気のない声を上げて、そこでまたしても言葉を詰まらせた沙羅。
マルコを押し倒したような体勢に驚き、密着する体を少しでも離そうと両腕に力を入れた。
が、腰に回された手がそれを許さない。
それどころか、マルコの片手が今度は首に回され、ぐっと引き寄せらた。
「っ!」
声にならない声を沙羅は上げた。
眼下には口の端をまさに、にやりと持ち上げているマルコ。
視線をそらすことも、逃げることもできない沙羅はただただマルコを見つめるしかできない。
視覚にも触覚にも感じられるマルコの存在にじわりじわりと、体が火照てり始めた。
その体の内から生まれた熱は、頭の先から足先までも浸食していく。
ついにはマルコの心を捕らえて放さない瑠璃色の瞳が、無自覚に妖しく潤み始めた。
「!!っ、・・・・・・」
それを目にしたマルコ内から湧き上がる獰猛な欲望。
“やべぇ・・・よい”
マルコは喉を鳴らした。
腕を掴んだのは、ほんの悪戯心だった。
だが、腰に手を回したのは無意識。
体が、
沙羅を、
欲っした。
頭では、これ以上はまずいとわかっていながら体は沙羅を求め始めた。
そんなマルコを誘う様に、はたまた理性を試す様にか。
初めて出会ったあの日から自分の心を絶えず揺らがせる瑠璃色の瞳が、間近で文字通り、ゆらゆらと揺らぐ。
このまま、腕を引き寄せて唇を奪い、その口の中に自身の舌をねじ込んでしまいたい。
無論、そんなことをすれば、沙羅の気持ちなど無視してその先を求めてしまうだろう。
体だけが欲しいのではない。
心も、体も、沙羅の全てが欲しいのだ。
何度も何度も自身に言い聞かせた思いを、そう改めて反芻する。