第20章 忘れられない女
その晩。
レッド・フォース号はほとんどの者が下船しており、静かな夜を迎えていた。
そんな船内のシャンクスの部屋に、こんこんこんと、ドアをノックする音が小さく響いた。
「うん?」
ベッドに横たわっていたシャンクスは生返事をした。
「シャンクス、今いい?」
「沙羅?!どうした?」
数ヶ月を過ごしたが、沙羅が部屋を訪ねてくるのは初めてだ。
驚いたシャンクスは、慌てて起き上がるとベッドから立ち上がった。
「お礼を言いたくて」
「礼?」
「さっきの、盃のこと」
そこで沙羅は僅かに間を置き、姿勢を正すとじっとシャンクスを見つめた。
「ありがとう、すごく、すごく嬉しかった」
言いながら気持ちが高ぶったのだろう。
僅かに頬を赤くして笑みを浮かべた姿に、シャンクスの心も温かくなる。
「気にするな、・・・酒好きだったのか?」
何となくこそばゆい気がして、シャンクスは話題を振った。
「うん・・・毎晩二人で飲んでたよ」
余程嬉しかったのだろう、自分のことをほとんど話さない沙羅がぽつりぽつりと語り出した。