第20章 忘れられない女
沙羅の決意に満ちた顔に、セリカは満面の笑みを返した。
「わかってるわよ、仲間になれないのは」
「え?!」
「だから、タイプじゃないの?って聞いたのよ」
セリカは意味深に笑った。
「好きになれとは言わないわ、でも少しは考えてみたら?シャンクスと・・・」
「え?・・・と」
セリカの言葉の意味がわからない。
仲間にもならない。
好きにならなくていい。
でも考えてみる、シャンクスと・・・?
「あ、誤解のないように言っておくけど、シャンクスの指示じゃないわよ、私の私見よ」
「・・・」
沙羅はセリカの言葉を再度、反芻した。
『シャンクスと・・・』その後濁された言葉。
沙羅が、その意味に気づくよりも早くセリカは答えをもたらした。
「体から始まる恋もあるでしょ?」
「!!」
沙羅は、ただただ真っ赤になってセリカをみた。
きっとセリカ以外の誰かに言われたのならば、
圧力に感じただろう。
侮辱だとか、屈辱を感じたことだろう。
だが、セリカは裏表がない。
嘘を言わない。
さほど長くはない付き合いの中ですら感じた、その、セリカの人間性。
それを知っていたからこそ、純粋に選択肢の一つとして良かれと思って提案してくれたことがわかった。
だからこそ、恥ずかしかった。
「もしかして・・・初めて?」
そんな沙羅の初々しい反応に投げかけられた言葉。
もう、セリカと目線は合わせられない。
俯きながら沙羅は頷いた。
「そう、じゃ、今の話は忘れて!初めてなら大事にしなくちゃ」
本当は沙羅に生きることへの執着理由を作りたかった。
怪我が治癒していくなかで、時々発せられた言葉。
『“直って”きましたね』
治るではなく、直ると感じさせられるのはそこに感情が含まれていないからだろう。
自分の体を、まるで物のように感じている沙羅を何とかしたかった。
“生きたい”と思わせたい。
その点、シャンクスは人としても、男として魅力に満ちた人間だ。
自分はすでに、溺れる相手がいるので、男としては全く興味はないが。
だから、体からでも溺れていけたらと思ったのだ。
だが、初めてが愛のない行為は苦しいだけだとセリカは知っていた。
「セリカさん・・・」
あまりにもあっさり撤回され、戸惑う沙羅に笑みを浮かべると『お休み!』と背中を押した。