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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第20章 忘れられない女


「っ・・・」
驚きと、羞恥に開かれた瑠璃色の瞳が揺らぐ。
どうしたらいいのかわからない。
唇をなぞった手は、今は後頭部に添えられている
それをそのまま解釈すれば、シャンクスが何を欲しているか気づかない程無知ではない。
両親を亡くしてから、沙羅は男の欲望を身を持って体験してきた。
幸い、自分よりも強い男に狙われることがなかったので事なきを得てきたが、それでも危うい目にあったことはあった。
その度に、沙羅は自分の欲望を押し付ける男達に嫌悪感を募らせてきた。
反面、沙羅は白ひげ海賊団の家族達のように優しい男達がいることも知っていた。
そしてシャンクスも、赤髪海賊団も後者だと思っていたのだが。
「・・・」
無理矢理、事を進めてくる気配はない。
ただ、じわりじわりと体を寄せられれば体温を感じるほどにシャンクスが近くなる。
困惑を浮かべた沙羅の瞳に映るシャンクスが徐々に大きくなった。
「?!」
思わず目をつぶった沙羅の左頬に、チクチクとした感触。
「ックくく・・・」
そして耳元に聞こえる笑い声。
沙羅は恐る恐ると目を開けた。
「・・・」
自分と同じ高さにあるシャンクスの顔。
その近さに驚いて目を見開いた瞬間。
「だっはっはっはっはっ~!!」
シャンクスが腹を抱えて笑い出した。
「・・・」
笑い続けるシャンクスを、沙羅は鳩が豆鉄砲を食らったような顔で暫く眺めていた。
が、何だか腹が立ってきた。
「シャンクス」
無論、その口調が僅かに尖っていることに、気づかないシャンクスではない。
「怒るな、怒るな、・・・悪かった」
笑いを収めたシャンクスは、両手を上げた。
まるで、降伏だと言わんばかりのポーズに悪びれない笑顔。
沙羅は小さく息を吐いた。
歳は上なのに、少年のようなシャンクスに不思議と怒ることができない。
とは言え、心はもやもやとし、無意識に眉を八の字にした。
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