第20章 忘れられない女
その後、船は無事に島に着き、補給を済ませることができた。
反面、沙羅の体調は急激に悪くなり、回復するまでに約一ヶ月を要した。
元気になった沙羅はこれ以上迷惑はかけられないと、船を下りようとした。
が、行き先のない旅をする沙羅をシャンクスは引き留めた。
「気にするな!旅は道連れってな」
と。
それから少し後。
とある無人島に男が二人倒れていた。
「いてぇ~、すげぇいてぇな」
「当たり前だ・・・」
「なぁ、腹減らねぇか?」
「・・・(グゥ~)」
無言で返すも、腹の虫は正直に鳴った。
「・・・ンクス!」
「「?」」
浜辺の方から人の気配がやってくる。
誰にも邪魔されないように、船は沖で待機させたはず。
決闘が終わったら来るようには言ったが、島の回りの天候が荒れてきていて船は近づけない。
「シャンクスっ!どこにいるの?」
だが、声は聞き取れる程に近づいてきた。
その声に黒髪の男は刀を構えようとした。
が、シャンクスはそれを制した。
「鷹の目、大丈夫だ、決して手は出さない。沙羅!こっちだ!」
「シャンクス?!」
程なくして、二人の激しい戦いによって倒れた木々を越えて沙羅がやってきた。
「生きててよかった・・・」
寝転んだまま、手を振るシャンクスの傍に来ると涙を滲ませた。
それでも、風雨から二人を守るためにすぐに簡易テントを広げ、“二人”の手当てをし、持参した飲み物や食べ物を広げた。
「薬草採ってくるね」
言い残して去っていく沙羅を鷹の目は唖然と見つめたまま。
シャンクスはそれを見て笑っていた。
「貴様、いつの間に妻を迎えたんだ」
「沙羅のことか?」
「他にいるか・・・」
「だよなぁ!・・・・・・妻じゃねぇよ」
笑って返したシャンクスの横顔が、急に切ない表情を浮かべた。
「思い人か・・・」
「あぁ・・・、俺だけだがな」
そう言ったシャンクスの表情はどこか自嘲気味だった。
あんな涙を見れば期待してしまう。
だが沙羅は自分を友達だから心配してくれているだけだ。
他意はない。
惹かれているのは自分だけ。
思っても思っても、その思いは一方通行なだけ。
「女は難しい生き物だ」
鷹の目の言葉が胸に染みた。