第20章 忘れられない女
「セリカ!見てくれ!」
ノックも早々に現れたシャンクスを一睨みしかけた。
が、しかし、その腕に抱えられた女を見ると、船医であるセリカはすぐにベッドに導いた。
体が異常に冷たい。
「海から引き上げたんだ」
呼吸は浅く、脈も弱い。
「なぁ、大丈夫か?」
「・・・」
「やばいのか?」
何も応じないセリカに、焦り気味に問うシャンクス。
「なぁ・・・」
「外に出て」
「?」
「女の子なの、わかる?服脱がせるから、出て!」
鈍いシャンクスに、冷たく言い放つ。
「す、すまん」
慌てて出て行こうとし、様子を見に来たベックマンと鉢合わせた。
「どうだ?」
「出、て、け!」
ベックマンの問いを遮るように言えば、大の男二人はそそくさと部屋を出た。
暫くするとセリカは部屋から出てきた。
「・・・」
目の前には麦わら帽子を顔に置き、横たわっているシャンクス。
「助かるのか?」
邪魔くさいから踏みつけようかと思ったセリカにかけられるシャンクスの言葉。
一度寝るとなかなか起きないこの男にしては、珍しい。いや、横になっていただけか。
「命に別状はないわ」
「そうか!よかった」
にかっと笑い、起き上がるシャンクス。
「いいか、悪いかはわからないわよ」
「どういう意味だ」
近くで、また釣り糸を垂らしていたベックマンが言った。
「彼女、訳ありよ」
「「?」」
「刺された傷が二カ所、多分かなりの出血があったはず」
「多分ってなんだ」
ベックマンの問いにセリカは言った。
異常な低体温や鼓動の弱さは極度の貧血によるもの。
傷痕のサイズから見てもそれは明白だ。
が、しかし、それは傷痕と表現できる程に回復していた。
血が滲むどころか、かさぶたもない。
だがつい最近まで出血していたとしか思えない症状。
医者からみては異常な治り方だと。
「人間・・・だよな?」
「そうね、見た目や生体機能としては人間ね」
「能力者・・・か・・・」
シャンクスの問いに答えたセリカの言葉に、さらなる可能性を感じたベックマンは言った。
「多いにあるわ、まぁ、貴方達みたいに能力者じゃなくても化け物みたいな人間かも」
笑いもせずに言い切るとセリカに、シャンクスとベックマンは顔を見合わた。
““お前程じゃねーよ””
とお互いに化け物具合を押し付けながら。