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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第19章 告げない愛、告げたい愛


 翌日、モビーディック号は島を出航した。

「お頭ぁ~!!白ひげの船が来ます」
「おぉ、相変わらずでかいなぁ」
「止めろ、落ちる」
言いながら身を乗り出すお頭の襟首を抑える男。
「ベックマン、苦しいぃ~っっっ」
そんなやり取りを前方に捕らえながら、マルコは指示を飛ばした。
「赤髪だよい、気をつけろ!」
進路が被らないように細心の注意を払う。
お互い、負ける気はないが無用な戦いはしない。
「よ~マルコじゃねぇかぁ~」
前方の赤い髪の男がマルコに手を振った。
「赤髪のシャンクスだ!!知り合いっすか?!」
その様子を見たトシは興奮気味に言った。
四皇に迫る勢いの海賊団、赤髪のシャンクスを知らない海賊は少ないだろう。
その実力は白ひげも一目置く所。
おかげで、赤髪のシャンクスの存在は無視できず。
マルコは沙羅と島を回るのを断念した。
あげくのはてに、青キジとやりあうはめになったのだ。
苦々しい思いで、マルコはシャンクスを見た。
が、そんな思いを知る由もなく。
むしろシャンクスは何故かマルコを気に入っていた。
「マルコぉ~俺の船に来ねぇか?」
かつて、次世代のルーキーとして紙面を騒がせた二人。
それが今や
片や世界最強の海賊団の一番隊隊長
片やその海賊団に迫る勢いの船長。
意識しないはずはない。
「なぁ、マルコぉ~!!」
「うるせぇよい!!」
すれ違い様、また勧誘するシャンクスを睨んだ。
「マルコ?どうかしたの?」
そんな怒った様子のマルコに、甲板に出てきたばかりの沙羅は声をかけた。
「何でもねぇ」
言いながら振り向けば、強風にあおられて乱れる髪を押さえきれず困り顔の沙羅。
その光景が何とも言えず可愛くて、マルコは乱れる髪に手を伸ばす。
細い髪を痛めることのないよう、掬うように優しく触れる。
と、ふわっと微かに香る懐かしい香りに目を細めた。
「懐かしい香りだねぇ」
「!・・・、うん・・・」
すると沙羅は微かに目を伏せながら小さく笑った。
厳しくも、深い愛情を持ち、母のように沙羅に接してくれたお琴。
そのお琴が好んだ月桂樹の香りは、今もお守りのように沙羅を包んでくれた。
思い悩んだり、迷った時にそれを焚くと、不思議と頭がすっきりとし、心が定まった。

“クザンさんは、やっぱり友達”

それが結論。それだけが答えでいい。
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