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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第19章 告げない愛、告げたい愛


ォゴォゴごご・・・。

地の底から響くような不気味な重低音。

二人を中心に、
空気が、
大地が、
軋んだ。

「「!!」」

沙羅とクザン。
互いに驚き、見つめ合った。
微動だにしない二人。

対して、
轟音に驚き、逃げ惑う周辺の人々。
怯むことなく、二人の元へと進んで来る仲間達。
大地は“きしきし”と揺れ続けている。

「「・・・」」
まるで二人しか存在していないかのように沙羅とクザンは動かない、いや、動けなかった。
クザンの足元から生み出された氷の道が、沙羅の爪先で不自然に止まっていた。
氷は先に進もうと軋み音たてながら小刻みに動いている。
だが、それより先には1mmとて進むことができず、沙羅の足元からは水となり染み出てくる。
ヒエヒエの実の能力から生まれた氷が、沙羅に触れ、溶けていく。
が、それが流れ出すことはない。
染み出てた水は、また霙になり徐々に氷になっていく。
二人の力が押し合う。
「・・・」
クザンは僅かに目を細めた。
海軍中将の中でも、一二位を争う強さを誇るクザンと互角に渡り合う能力者はそう多くはない。
もちろん海軍を脅かすほどの能力者は、監視されている。
その中に沙羅の名前はなかった。

そう、クザンは知っていた。
沙羅が白ひげ海賊団の一員であることを。
それでも、諦められなかった。
自分の立場や将来。
海軍と白ひげ海賊団の関係。
沙羅の立場や未来。
それらを考えれば考える程、迷っていた。
迷うほどに真剣に考えていた。

沙羅に、
本気で惚れていた。

「あらら・・・」
誰に言うともなく呟いた。
沙羅が悪意をもって誰かを傷つけたり、盗みを働くことはないだろう。
いや、ない。断言できた。
だが、もし白ひげ海賊団に何かあれば・・・。
この強大な力は牙を剥くだろう。
白ひげの前で見せる少し幼くなる笑顔。
仲間と騒ぐ楽しそうな声。
時々、自転車で海を渡り沙羅を見ていた。
自分でもどうかしてると思った。
それでも自身を御せなかった。
「・・・」
頭が、心がまとまらない。
だが、流れる時間は止められない。
沙羅を守ろうと白ひげ海賊団の仲間がクザンに襲いかかる。

それを、避けるか、
そのまま受けるか。
それとも、
打って出るか・・・。
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