• テキストサイズ

海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第19章 告げない愛、告げたい愛


 白ひげ海賊団のクルー達が血相を変えているとは露知らず。
沙羅とクザンは呑気にランチをしていた。
“海”を通して世界中の人々の感情や、自然の流れは感じていても地上のことや文化のことはわからない。
親の敵を探し世界中を旅していたとはいえ、クザンの経験には遠く及ばない。
特に、新世界を出たことのない沙羅には外海の話は新鮮だった。
中でも興味を引いたのはグランドラインにある国の話だった。
「アラバスタ・・・?」
「砂だらけの国、砂漠がほとんどだな」
砂だらけという国を想像して目を瞬かせた。
「砂漠・・・」
いったいどんな国なのだろう。
本能的に水の少ないところを避けている沙羅は、見たことのない、未知なる国の話を熱心に聞いていた。
無論、クザンも会話を楽しんでいた。
だらけているように見えても、己の掲げる正義を貫くためには非情な決断をしたり、苦渋の決断を下す日々。
そんな日常に現れた沙羅はクザンの心を自然と和ませた。
初めは一目惚れだった。
だが話せば話すほど、
沙羅の物事に対する考え方、
穏やかな話し方
気配りのある美しい所作・・・
全てがクザンを引きつけた。
思いを伝えたいと思ったことも何度もある。

だが・・・

クザンは愛と哀の混ざった瞳を沙羅に向けた。


ちょうどその時。
『・・・ん!!』
遠くの方から誰かを呼ぶ、叫び声がした。
叫び声は怒濤のように沙羅達のいる方に向かってくる。
『・・・さ~ん!』
『副長~~~!』
その呼び方に沙羅は声の主を振り返った。
見知った顔が、血相を変えて向かってくる。
「沙羅さ~ん!危険です!」
「?」
何事かと思いながら沙羅は、訝しげに椅子から立ち上がる。
「危ねぇよ~!」
「沙羅さん、そいつは青キジです!」
その呼び名を知らない沙羅は、困ったようにクザンと仲間を交互に見た。

ほぼ同時だった。
「そいつは海軍です!」
「中将だぁ!!」
クザンを見た沙羅の目が、
大きく見開かれる。

氷が、
クザンの足元から、
一直線に仲間の元に走った。
いや、走って行こうとした。
/ 366ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp