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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第18章 覚悟 


読み終えたマルコは開口一番に言った。
「沙羅は日記を読み終えたのかよい?」
マルコの問いに頷いたイゾウは目を伏せた。
「・・・ほとんど寝てねぇんだ、屋敷を出てから」
「・・・」
無意識に細められるマルコの目。
「・・・すまねぇ、俺が余計な・・・」
「行くと決めたのは沙羅だ」
イゾウの言葉を制し、マルコは言った。
マルコは誰よりも分かっていた。
沙羅が覚悟を持って親族を訪ねたこと。
「マルコの言うとおりだぁ、俺達がやるべきは沙羅が自由に生きられるようにすることだ」
白ひげの言葉に二人は深く頷いた。
「天竜人も面倒だが、黒油が気になるな」
世界中の人々が恐れる天竜人を一言で片づけるマルコに、白ひげは密かに笑った。
随分と逞しくなったものだ。何事にも執着せず、自分の命すら興味のなかったころとは雲泥の差だ。
今のマルコなら間違いなく天竜人を擁護する海軍、そして大将とも互角にやり合えるだろう。
黒油に触れた沙羅を海楼石に触れた悪魔の実の能力者と表するイゾウの声を聞きながら白ひげはしみじみと息子の成長を感じていた。



 深夜、意識を取り戻した沙羅はぼんやりと目を開けた。
見慣れた部屋は、ここがモビーディック号の自室だと自認させた。
「・・・」
考えるとはなしに、沙羅は甲板に足を運んだ。
夜風に浴衣の裾が翻り、袂がふわりと揺れる。
神秘的というよりも幽鬼のように見えるのは、その暗い表情のせいだろうか。
それとも心情がそうさせるのか。
夜の海をただただ、ぼんやりと眺める。
海に飛び込んだところで、命を絶つことは適わない。
それでも暗い暗い海の底に、この身を沈めてしまえば全てを忘れられるのではないか。

子供心に、神経質な母だと思っていた。
沙羅が父と町に行くことすらも、酷く嫌がった。
ごくまれに訪れる客人が、母の容姿を褒め称えると隠れて泣いていることもあった。
外界との接触を極力絶ち、それを沙羅にも求めていた。
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