第3章 偉大なる双璧
その瞳を見たサッチは苦笑いを浮かべた。
“・・・だよなぁ・・・”
マルコが無自覚に沙羅に特別な感情を抱いているのは明白で、それは日を追う毎に強くなっていた。
皆より一歩下がって事態を静観していたサッチは、振り返ったマルコと視線を交わした。
「手、離せよい」
「あぁっ?!口の聞き方に気をつけろ!殺すぞっ」
言いながら沙羅の髪を強く引っ張れば、恐怖と苦痛で、言葉にならない声が漏れ、涙がこぼれる。
「っ!」
僅かながら動揺したマルコの動きが止まる。
空かさず横にいた男がマルコに拳を繰り出した。
“ガッッッ!!”
鈍い音が響く。
男は動かないマルコを殴り飛ばした。いや、殴り飛ばせるはずだった。
「?!」
拳を上げた男の表情が恐怖に変わる。
マルコの鍛え上げられた体は、男の拳にびくともせず、視線すら遮れない。
マルコの目は、真っ直ぐに沙羅に手をかけている男に注がれていた。
自分を殴った弱い拳など眼中にも、ない。
「手ぇ、離せよい・・・」
「~~~~ックソッ!!!!」
仲間の攻撃にびくともしないマルコに、逆上した男は
沙羅に刃を向けた。
だが。
“キィィィィンー!!”
金属のぶつかる音とともに、沙羅を捕らえていた男の背後から突如現れたサッチは、軽々と剣を受け止め、男の腹を蹴り飛ばした。
「グガァッ!!」
情けないうめき声と共に、男は地面に倒れ込んだ。
「あらら、大したことないじゃん」
「っな・・・ッグァ!!」
その光景に男達が驚いたのは確かに一瞬だった。
だが、その一瞬の隙を計っていたマルコの蹴りが、横にいる男を捕らえた。
横の男は勢いよく吹っ飛び、そのまま後にいた仲間をも巻き込んだ。
さらにマルコは、蹴り出した足の反動を利用し、回し蹴りを繰り出した。
「ッ!」
「「ガァッ!!」」
反撃どころか、武器を構える暇すら与えなかったマルコの眼下に、転がり呻く男達。
“さすが、恐ぇ恐ぇ”
目線をこちらに寄越したマルコに、サッチはにやりと賞賛の笑みを送った。