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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第18章 覚悟 


お酒の飲めない沙羅に出された甘酒にも睡眠薬が入っていたに違いない。
イゾウは微動だにせずに相手の出方を、待った。
暫くすると視線が消え、音もなく障子が開いた。
忍び足で三人分の足音が入ってくる。
二人はイゾウを囲むように立ち、残る一人は沙羅の横に立った。
目を開けるわけにはいかない。
イゾウは気配だけで、三人の様子を探った。
沙羅の横に立っている覚えのある気配は贋兵衛であろう。
一体何をするつもりか。
微かに衣ずれの音がする。

“・・・”

イゾウはまさか、とは思いつつ嫌な予感を覚えずにはいられない。
贋兵衛が呟いた。
「美しい・・・」
「“献上”できそうですか?」
「申し分ない、この顔、この肌、きっとご満足いただけるに違いない」
贋兵衛の言葉に、体が動きそうになるのをイゾウは努めて制し、冷静に分析した。
程度はわからないが贋兵衛が沙羅の体を見ているのは確かだ。
だが、言葉使いからしてかなり位の高い者に沙羅を差し出そうとしているのであろう。
となれば、気安く体に触れたりはしないだろう。
もっとも、沙羅の普段秘められたを部分を見た時点で、イゾウの腸が煮えくりかえることに変わりはないのだが。
それにしても、ユエの育ての親だと言ってた贋兵衛の目的は何なのか。
沙羅を献上するというが、
一体誰に?何のために?
沙羅が海神族であることと関係があるのか。
それとも沙羅だからなのか。
「ところでこの男はどうしますか?」
考えを巡らすイゾウの耳に入ってくる声と感じる殺気。
もちろん、大人しく殺されるつもりはない。
必要ならこの屋敷にいる者を全員倒すことは容易い。
イゾウは贋兵衛の出方を待った。
「止めておけ、白ひげ海賊団に手を出せば面倒なことになる」
その言葉にイゾウは夕餉の際に一瞬感じた違和感を思い出した。
住まいを問われた際に、船が家だと伝えると『まるで海賊のようですな』笑いながら言うので、『ようじゃねぇな、俺は白ひげ海賊団だ』と言った時、贋兵衛の目が一瞬伏せられたような気がした。
あれはやはり気のせいではなかったのだ。
傍にはいなくとも、家族に守られているありがたみを感じ、イゾウの胸の内がじわりと温かくなる。
その耳元に届く声。
「それよりも早く準備を」
贋兵衛の声に二人の気配が動く。
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