第18章 覚悟
『マルコが好きそう!』
『マルコにも見せたい』
『マルコともう一度来てみたい』
そばにいなくても“マルコ”は沙羅の心の中に、常に自然といる存在なのだと思い知らされた。
とはいえ、諦められないこの思い。
楽しそうに笑う顔も、
思案気な顔も、
嬉しそうな顔も、
怒った顔も、
今だけは全てがイゾウに向けられる。
ましてや再び和の国に足を踏み入れることに、本当はかなりの抵抗を覚えていたイゾウ。
もちろん表情にも態度にも出してはいない。
しかし、イゾウ自身も気づかないほど微細な変化を感じ取った沙羅はさりげなくイゾウを気遣った。
その自然な優しさに、奥底に潜む修羅の心が何度癒されたことか。
沙羅が、自分を一人の男として見てくれたら。
沙羅の、愛しい人になれたなら。
沙羅と、思いを通い合わせられたなら。
自分の気持ち押し通すつもりはない。
ただ、この先を沙羅と共に歩みたかった。
ふっ・・・イゾウは笑った。
違うな、ただただ沙羅が欲しいのだ。
マルコにも、誰にも渡したくない。
本当は体からでも手に入れて、じわりじわりと心を侵食していこうと考えたことだってある。
沙羅を見つめたイゾウの目に危険な色が宿る。
規則正しい寝息。
無防備な寝顔。
「・・・」
イゾウは自身の欲を散らすように首を振った。
そして残っていたお酒を口に放ると、布団に戻った。