第17章 それぞれの想い
「大丈夫、マルコを一人にはしないよ」
マルコの不安を少しでも和らげたいと、思って。
いつも、自分がそうされて、ほっとしていたから。
対するマルコは、沙羅の行動に激しく動揺していた。
月明かりの他はランプの灯りのみの“自分の部屋”。
沙羅が自分と話をするために訪ねてきたのは理解している。
だが、惚れている沙羅と二人っきり。
しかもクルー達も眠り初めて、辺りも静かになり始めた頃。
“意識しないはずがない”
うっかり触れてしまった肌に溢れ出しそうになる欲情を必死に抑えていた。
『沙羅・・・』と無意識に呼んでしまった声音は自分でも驚くほど欲にまみれていた。
それでも、滲み出た欲をひた隠し、切れかけた理性の糸を結び直そうとしていたマルコ。
そんなマルコを試すかのように蓮の香りが鼻孔をくすぐった。
“?!”
一瞬何がおきたかわからない、否、本能的にこれは“やばい”と頭が認識しないように邪魔をした。
たが、ほのかに香る沙羅の香り。
頭を包む柔らかな腕。
そして顔に微かに触れる柔らかな感触。
それらは確かにマルコを包み込み、それが現実だと認識させた。
女とはそれなりに遊んできた。
体だけの関係ともなれば、自分の思うままに貪り豊かな胸に顔を埋めたこともある。
だが、今マルコの体中を巡る欲情はその比ではなかった。
触れるか触れないかの位置にある沙羅の胸。
ふわりとマルコを包み込むような柔らかい仕草。
普段は気づくこともあまりない微かな蓮の香りが呼吸とともに鼻孔に届く。
それが尚更マルコと沙羅の距離を如実に表していて、どうしようもなく体の中が熱くなる。
マルコは体を硬直させた。
指一本でも動かせば、自分が何をしでかすか、わかっている。
沙羅と再会してからまもなく一年。
マルコは日に日に抑えられなくなっている自分の内に巣くう激しい欲情を自覚していた。
沙羅が欲しい
沙羅を抱きたい
募る欲望を持て余しつつ、沙羅を泣かせてまで事に及ぶことはできず。
傷つけたいわけでもなく、無理強いしたいわけでもない。
ただ・・・。
“沙羅と愛し合いたい”