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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第17章 それぞれの想い


それでも、臆することなく白ひげの目を穏やかに見つめた。
『二人だけで旅をして俺を知って欲しい』
赤面することすらなく、言い切ったイゾウ。
にも関わらず、最後に小さく言った。
『マルコと争うつもりはねぇんだ、すまねぇ』
マルコが沙羅に惚れているのは周知の事実。
だからこそ、思いをひた隠す者、憧れに留める者がいることを白ひげもイゾウも気づいていた。
イゾウとて、同じこと。
初めは自分の気持ちを抑え込もうと試みた。
だが、沙羅を知れば知るほど気持ちは募り、沙羅に惹かれ、心を偽れなくなった。
自分が気持ちを吐露すれば、今、危うくも絶妙なバランスで保たれている家族の和を乱すことになるかもしれない。
それでも、これ以上自分の気持ちに蓋をすることはできなかった。
そんなイゾウの葛藤を感じ取った白ひげは言った。
『マルコだけが特別じゃねぇ、みんな同じ家族だ』
『オヤジ・・・』
イゾウは微かに目を細め、ほんのりと頬を染め柔らかく微笑んだ。


「グラララ~・・・」
イゾウの照れ隠しした表情を思い出した白ひげは嬉しそうに笑った。
シルビアは首を傾げるも、問い返すことはしなかった。


 イゾウと沙羅が和の国に旅立つ前日の晩。
沙羅はマルコの部屋を訪ねた。
イゾウと和の国に行くことを告げて以来、マルコは沙羅を避けていた。
もちろんそれに気づかない沙羅ではない。
何度も話し合おうと声をかけたり、待ち伏せして話す機会を作ろうとしたが、『忙しい』『手が離せない』と断られ続けてしまった。
このままでは行けない。機嫌の悪いマルコに、クルー達も顔色を窺いながら接しているのだ。
沙羅は意を決して扉をノックした。
「マルコ、入るよ?」
今いい?と言えば断られるのは学習済。数秒マルコの反応を待った後、入ることを宣言した沙羅は扉を開けた。
仕切りの奥は私室。その手前の業務部屋の机に広がる資料。その資料から目線を移し、困惑と苛立ちを混ぜたような表情のマルコと視線が合わさった。
「ごめんね、邪魔しちゃって」
マルコが多忙なのは事実。申し訳ない気持ちになりながらも、マルコの前に立った。
「・・・」
「・・・」
一言も発しないマルコに、言葉を切り出せない沙羅。
「・・・」
「・・・」
それでも、言うのは今日しかない。
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