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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第16章 決戦のハレム島


「沙羅」
自分を呼ぶ声は“昔よりも”少し低い。

“・・・昔よりも?”

何故、昔と思うのだろうか?
何故、マルコが大人になっているのだろうか?
どうして、死んでしまったマルコがいるのだろうか?

“マルコはいつ死んだの?”

湧き上がる疑問。
父と母の死ぬ時は聞こえていた。
遺体も確認した。
でも、マルコは?

ゆらゆらと沙羅を覆っていたベールが揺らぎ始めた。
「沙羅、傍にいるよい」
マルコは痛みに耐えながら、穏やかに話しかけた。
否、もう痛みを感じない程に体中に裂傷が走り、所々、深くえぐられていた。
それでも、マルコは信じていた。
沙羅は必ず“ここに”戻ってくる、と。
そして、絶対に家族を殺したりはしない。
「沙羅、俺はおめぇを一人にはしねぇよい」
「・・・」
沙羅を覆っていた青白い光が消えていく。
真っ青な瞳と瑠璃色の瞳が忙しなく入れ替わる。
そんな、沙羅の耳元にマルコは囁いた。
「沙羅、何があっても、俺はずっと傍にいる」

何があっても、
もし沙羅が他の男を選んでも、
もし沙羅が死ぬときは、オヤジに許しを請おう。
“共に”と。
マルコは自分の心に誓った。
「・・・マルコ?」
直後、聞き慣れた声がマルコの耳元に響いた。
「沙羅!」
マルコは抱きしめていた体を僅かに離し、顔を覗き込んだ。
瑠璃色の瞳にマルコが映る。
「お帰り、沙羅」
マルコはほっと笑みを浮かべた。
「ごめんなさいっ、ごめんなさい」
全身を赤く染めたマルコを見た沙羅は、自分が何をしたか、すぐに気がついた。
だが泣きながら謝る沙羅を、マルコは優しく抱きしめて言った。
「謝るな、約束したろい?必ず止めてやるって」
その言葉に沙羅は泣きながら何度も頷いた。
「マルコ、ありがとう」
泣きながら笑い、そして、小さく呟いた。
『ごめんね、マルコ』
何に対しての謝罪か一瞬分からなかった。
だが、背伸びした沙羅の顔が近くなり伸ばされた手がマルコの顔を少し下に引いた。

“!!”

微かに触れた唇の感触と、一瞬にして消え去る海の呪縛。
蒼い炎がマルコの全身包み、傷を治し再生していく。
目の前には、頬を真っ赤に染めながら視線を逸らした沙羅。
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