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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第16章 決戦のハレム島


 沙羅が再び乗船すると決まった時、白ひげは改めて隊長達に告げていた。
その気になれば、世界中の海を荒れ狂わせ、島々を海底に沈めることができる力を持っていると。
だから、悲しませるな、怖い思いをさせるなと。
怒りで世界を滅ぼすような、気質ではない。
深い深い悲しみに襲われたり、
強い恐怖を感じた時に、
その力は発動すると。
だから、誰も命を落とすなと。
家族を失うことが、沙羅のもっとも恐れていることで、悲しむことだと。
白ひげは隊長達に言い聞かせていた。

 その世界が滅びる危機が今、目の前にある。
サッチの言うように、今、マルコが止められなければ、世界が滅びる。
焦ってもどうにもならない。
今、自分にできることは・・・。
イゾウはヒョウを冷たく見下ろした。
沙羅の波動をまともにくらったのだろう。
虫の息のヒョウの胸倉を、イゾウは容赦なく掴んだ。

 ゆっくりと沙羅との距離を詰めていくマルコ。
もちろん、死ぬつもりはない。注意深く沙羅を見つめ、波動を交わしながら、歩を進める。
「沙羅、俺だよい、マルコだよい」
ちょうどマルコと同じくらいの高さで浮いている沙羅の瞳を覗き込むように視線を合わせる。
絶え間なく流れる涙を、拭おうと延ばされた指が沙羅を包む青白い光に触れた瞬間、マルコは僅かに顔を顰めた。
激痛がマルコの手から全身に伝う。
だが、マルコが顔を顰めたのは痛みからではない。
一瞬見えた、血塗られた光景。
沙羅の見ている、抱えている苦しみ、記憶。
こんなにも苦しく、悲しい記憶を一人で抱えていたのかと。
「・・・沙羅、俺は、傍にいるよい」
マルコの全身を想像を絶する痛みが襲い、血が流れ出す。
それでも、
躊躇うことなく、
マルコは、
沙羅を抱きしめた。

傍にいる。
苦しみも、
悲しみも、
俺が半分持ってやる。

お前は、
一人じゃねぇ。

「沙羅」
ぎゅっと意識を呼び戻すように強く抱きしめた。
「沙羅、おめぇは一人じゃねぇ」
“・・・”
焦点の合わない真っ青な瞳が、マルコをぼんやりと映した。
金色の髪に、
特徴的な髪型。
少年の面影を残していたはずの顔は、
精悍さを増し、大人の男の顔になっていた。
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