第16章 決戦のハレム島
その言葉にほっとしたオーナーは、マルコに目配せしてきた。
密着したままの沙羅から離れ、耳を傾けた。
そのマルコの耳に告げられる言葉。
『花魁を売って下さいませんか?』
僅かに目を細めたマルコに慌てて付け加える。
もちろん“事”が終わった後で構わない。
自分達の大事なお客様に花魁を見せたいのだと。
「大事な客?誰だ?」
「は、はい、ゾイド様です」
“““!!”””
三人に動揺が走る。しかし、そんな心中を感じさせることなくマルコはオーナーの言った。
「・・・まぁ、終わった後なら構わねぇよい」
話は終わりだと、マルコは沙羅の背中を押してベッドへ導いた。
もちろんオーナーはすぐにカーテンの向こうに消えた。
ほっとした沙羅をベッドの縁に腰かけさせて、自身はその左側に片膝を起き、身を乗り出すようにして左耳に告げた。
『まだだ、監視されてるよい』
耳にかかる息に僅かに体をのけぞらせようとすれば、いつの間にか後ろに回りこんだサッチの胸板にあたる。
『ごめん、沙羅ちゃん、少し頑張って』
サッチの声が右耳をくすぐった。
瞬間、左耳に柔らかく温かいものを感じた。
「っ!」
マルコの唇が左耳をゆるりと食む。
咄嗟に『マルコ!』と言おうとした沙羅の左耳に
『マルコ隊長だろい』と囁きながら、耳の輪郭に舌を這わせるマルコ。
そのまま舌を進め、外耳道に舌を入れる。
耳の中に直接響く水音。
「ッマ・・・マルコ・・・隊長・・・」
羞恥に耐えきれず、沙羅は止めて欲しいの意を込めてマルコの名を呼んだ。
“沙羅ちゃん、逆効果だから”
極力触れるか触れないかの距離を保ちながら“ふり”をしているサッチは内心ため息をついた。
そんな可愛い声で止めて欲しいなんて言われても、目の前の男は止めない、いや、止められないよ。
むしろ、もっとやるタイプだから。
そう思いながらマルコを見れば、案の定ニヤリと悪い笑みを浮かべていた。
“頼むから任務忘れんなよ”
サッチはひたすら願った。
「っッア・・・」
その願い空しく、マルコは左耳をなめ回し、そのまま首筋に舌を這わせ、強く吸った。
ちりりと走る痛みと、体の奥からわきでるぞくぞくとした感覚に沙羅は思わず声を上げた。
それでも、これは花魁の水揚げだという思いが、否の言葉を封じた。