第16章 決戦のハレム島
オーナーの前に現れたマルコは、海賊らしくぎろりと睨むように挨拶をした。
だが、オーナーは満面の笑みでマルコ達を歓迎した。
「マルコ様にサッチ様、当店にお越しいただき光栄です」
言いながら、確認するように沙羅を見た。
するとサッチが一歩進み出て答えた。
「花魁は初めてか?」
ニヤリと笑いながら、沙羅の手を取る。
「はい、恥ずかしながらオイランやキモノは初めてで」
ハレム島の娼館には着物など無縁だ。いるのは透け透けのドレスの娼婦達のみ。
こんなに露出の少ない娼婦など見たことがない。
なのにどことなく色気を感じるのは“オイラン”の為せる技か、それともこの女だからだろうか。
オーナーの睨めつくような視線に耐えきれず、沙羅は目を伏せた。
と、沙羅の手を取っていたサッチが絶妙のタイミングでその手に唇を寄せた。
その感触に驚き顔を上げた沙羅の耳元にマルコが囁いた。
「花魁だよい」
微かにかかる息。咄嗟に頬を染めるも、はっとした沙羅は右往左往することなくサッチの行為を大人しく受け入れる。
そんな沙羅の腰に腕を回し、体を寄せるマルコ。
手にはサッチの感触、全身に感じるマルコの気配と腰を撫でる大きな手に微かに体を震わせた沙羅。
「いや~花魁の水揚げとは羨ましい」
ニヤニヤと下品な笑みを浮かべながら一部始終を眺めていたオーナーはそう言うと、準備の整ったナイトルームへとマルコ達を導いた。
二階に上がるとイゾウとルイは右へ、マルコ達は左へと案内される。
先に部屋の前に着いたイゾウは、大事なお客様であるマルコ達が部屋に入るのを見送ると、分厚いカーテンを開けた。
カーテンを開いたマルコとサッチは内心ため息をついた。
まさかとは思っていたが、カーテンの奥に扉の着いた個室はなかった。
あるのは分厚い遮音性のカーテンに囲まれた空間。
そこに豪華なベッドと小さなテーブルと椅子があるのみだった。
「・・・」
沙羅は状況がよく分からず固まっている。
そんな三人の背中にオーナーが言った。
「いかがですか?ホテルとは違い、スリルがございませんか?」
要するに、いつ覗かれるかわからない緊張感を快楽として味わう部屋だった。
“悪趣味だよい”
内心悪態をつきながらもマルコは、余裕の笑みを浮かべ『悪くねぇ』と答えた。