第16章 決戦のハレム島
連日、大富豪のお気楽三男坊を装い、若い連中と豪遊しているイゾウ。
自身は適当に女をあしらい、若い連中を楽しませてやってくれと言い渡してあったイゾウの元へ、一人の女が現れた。
回りの女達からルイ姉さんと呼ばれている女はかなりの売れっ子らしい。
実際、その美貌に魅惑的な体、気の利いた会話は百戦錬磨のイゾウをも感心させた。
ルイはイゾウに軽く体を寄せて囁いた。
『ねぇ、イゾウさんは興味ないの?』
言いながらイゾウの太腿に微かに手を這わせて、視線を上に向けた。
吹き抜けなった二階には壁に分厚いカーテンが引かれ、その前はお洒落なラウンジになっている。
『・・・』
視線を向けたまま言葉を発しないイゾウに焦れるようにルイはさらに言った。
『ねぇ、イゾウさんってその気あるわよね?』
『・・・』
イゾウはわざとルイに冷たい視線を向けた。
『ふふ・・・、恐い目、ゾクゾクしちゃう』
ルイの腕がイゾウの首に絡み、耳元に唇が寄せられた。
『私、イゾウさんになら啼かされてみたいんだけどな・・・』
そう言ってイゾウと目を合わせて囁いた。
『ナイトルーム興味なぁい?』
そこで、そのまま誘いにのってみようかとも思ったのだが、日々暴走気味の若い連中を捨て置くのも、いささか不安なイゾウは上手くルイを交わし、その場は収めた。
そして、他人のふりをして別行動していたラクヨウにナイトルームを見張るよう目で示し、自身は店を出て今に至る。
「二階かぁ、盲点だったなぁ」
「よい」
秘密屋敷は地下にあると思っているマルコ達は一階を重点的に調べていた。
「で?そのナイトルームは店の女と客だけしか入れねぇのかい?」
イゾウが沙羅のいる前でこの手の話をするのは珍しい。
意図を感じたマルコが問いかければ、イゾウはくつりと笑って答えた。
「それなんだがねぇ」
おもむろに沙羅の顎に指をかけて、軽く上向かせると妖艶に微笑んだ。
「沙羅、お前さん水揚げやりねぇ」
瞬間、マルコが口に含んだコーヒーを吹き出し、さらに怒鳴った。
「イゾウっ!てめぇ!」
かつて和の国を訪ねた時に、白ひげの知り合いから水揚げを頼まれた事のあるマルコはその意味を知っていた。
水揚げは遊女の初夜の相手を意味する。
それを沙羅にやれとは、マルコは激怒した。
「マルコ?」
「汚ぇなぁ」
対する二人は意味をわかっていない。
