第15章 ハレム島に巣くう闇
小梅は無意識に避けていた部分を話し出した。
初めは少しばかり激しい行為を好む客だと思っていた。
イゾウが見つけた立入禁止の一室を訪れた小梅。
そこで何不自由なく過ごし、ゾイドとは知らずに相手をしていた。
一日に一回、見事な白髪の美丈夫が訪ねてきてはきめ細やかに世話をやいてくれた。
数日の後、その白髪の美丈夫、“ヒョウ”と呼ばれた男が小梅に囁いた。
『主が貴女様をいたくお気に召しました、よかったら屋敷にいらっしゃいませんか?』
と。
もちろん、それなりのベリーを提示しての話だ。
小梅は二つ返事で、ホテルから屋敷に迎った。
屋敷の場所は秘密だと言うヒョウに目隠しをされて、手を引かれて歩いたのも小梅の心を高ぶらせた。
階段下り、外に出たのはわかった。
それから少し歩いた後、到着した場所は・・・、
地獄だった。
昼も夜もわからず、気まぐれにゾイドに抱かれた。
いや最早抱かれたのではない、犯されたのだ。
帰りたいと懇願しても許されず、
今日だけはと拒否しても許されず。
牢獄のような部屋には同じような境遇の女が何人もいて、時々、帰ってこないこともあった。
女は少なくなると“補充”された。
幸か不幸か、小梅は長く生きたほうだった。
時折、男の呻く声が聞こえることもあった。
そんな日々で小梅は“かや”という女と数日間同室となった。
かやは長くゾイドの相手をしているお気に入りで、たまたま、かやの個室で“不手際”があって部屋が汚れてしまったらしい。
かやは多くは語らなかったが、何か恐ろしいことがあったのだけは窺い知れた。
かやには許嫁がいて、その男を守るためには従うしかないのだと薄らと涙を浮かべながら話していたことを小梅は思い出した。
そして、それから数日後小梅の命は終わりを告げた。
マルコとイゾウは目を見合わせた。
薄闇の中にぼんやりとした手掛かりしかなかった昨日から一転、真相に大きく近づいたのだ。
後は屋敷の場所がわかれば、かやを救出し動かぬ証拠も手に入る。
そんな二人をよそにずっと小梅を眺めていた沙羅がやっと口を開いた。
「小梅さんが、皆様が見えました・・・ごめんなさい、ずっと呼んで下さっていたのに・・・」
頭を下げた沙羅に小梅は目を丸くした。騙されたとはいえ、自分の意思でヒョウの手を取ったのは自分だ。
こうなった責は自分にある。
