第15章 ハレム島に巣くう闇
「ジョズ・・・それはまずいだろ」
サッチがちらっとマルコを見た。
「猛獣に子羊、いや、子犬か」
ビスタもマルコを見た。
「イゾウが一緒に泊まったら?」
ハルタは満面の笑みを浮かべた。
「ばか!それもまずいだろ」
ラクヨウはイゾウとマルコを見比べた。
イゾウが沙羅に本気なのを知っているのは隊長達の中でも数名だ。
この場合ハルタはマルコをからかうために、対するラクヨウはイゾウが本気で沙羅に惚れているのではと疑っての発言だった。
するとイゾウはくつりと笑い、からかうように言った。
「沙羅は十六番隊の隊員だからなぁ、この場合俺が行くのが筋ってぇもんだ」
イゾウは自分の気持ちを知られないように常に気を配っていた。
理由は、自分の体裁を気にしてではない。
もし隊長同士が一人の女を本気で取り合っていると知られれば、隊員達に影響がでるかもしれない。
そしてそうなれば悪く言われるのは沙羅であることも恐れていた。
“船に女を乗せると不吉なことがおこる”
イゾウは信じていないが、信じる者もいる。
イゾウは口元に弧を描きながら、ちらりとマルコを見た。
マルコにはイゾウがなぜそう言ったのか伝わっているだろう。
僅かに目元を歪めているマルコは、それでも“いつも通り”言った。
「認めねぇよい」
想像通りの返答にイゾウはくつくつと笑い、『公私混同してんじゃねぇよ』と返した。
暫し続いた応酬に割って入ったのはサッチ。
「だ~~~~~!!切りがねぇ、ラクヨウ、女がいればいいんだよな?」」
「?あぁ、そうだ」
「三人で泊まってこい!」
「「!!」」
固まるマルコとイゾウ。
「「「・・・」」」
意味深に視線を交わす数名の隊長。
「え?それって3Pってこと?」
空気をわざと読まずにハルタが爆弾を投下した。
「「ハルタ!!」」
思わずサッチとラクヨウが咎めたが、後の祭り。
気がついていなかった隊長達もマルコとイゾウを見て苦笑を浮かべた。
しかしこの二人が動揺するはずもなく、にやりと笑い合い『じゃ、明日は船を頼むよい』『せっかくだ、三人で楽しもうじゃねぇか』と言い放ち会議はお開きになった。
会議後、本気で沙羅の身が心配になったハルタ。『ねぇ、まさか本当にしないよね?、あの二人相手にしたら沙羅壊れちゃうよ』と言い、サッチを呆れさせた。