第15章 ハレム島に巣くう闇
するとマルコは力が抜けたらしい。
『はぁ~・・・』と大きく息をはき出すと、そのままぎゅっ・・・と沙羅を抱きしめた。
マルコの体は微かに震えていた。
「!!・・・マルコ」
そこで沙羅はやっと気がついた。マルコにどれだけの心配をかけていたことに。
「ごめんなさい、ごめんなさいマルコ」
きゅっとマルコの腰帯を握り、縋るように謝る沙羅。
「沙羅・・・いいよい、おめぇが無事ならそれでいい」
自分の腰帯を握る沙羅の手を意識しつつ、マルコは改めて強く抱きしめた。
普段なら真っ赤になって抵抗する沙羅も、身じろぎすることなく受け入れる。
それでも、どうしても目を見て謝りたい沙羅は、そのまま顔を上に向けた。
「心配かけてごめんなさい、マルコ」
マルコの瞳と、
沙羅の瞳が、
重なった。
「・・・!!」
自分でも理性の糸が“ぶつり”と音を立てて切れたのがわかった。
自分を真っ直ぐに見上げる瑠璃色の瞳。
愛しくて、
愛しくて、
どうしようもなく愛しくて、
思いが、
溢れた。
「沙羅・・・」
名前を呼びながら、背中に回していた手を持ち上げた。
名前を呼ばれた沙羅は僅かに首を傾げつつも、変わらずマルコを見上げている。
マルコの手が、その頭を支えるように後ろに添えられる。
小柄な沙羅との距離を縮めるように体を屈め、腰に回していた手をそのままに、沙羅を支えるように抱きしめた。
マルコの瞳に、大きく見開かれた沙羅の瞳が映った。
沙羅の息がマルコの唇にかかり・・・
そこで『でさぁ~』と一際大きな声がマルコの耳に届いた。
思わず我に返るマルコ。
「・・・」
そのまま唇を重ねたい衝動をグッと抑えると、“コツン”と額を合わせた。
「この島では絶対一人で動くんじゃねぇよい」
マルコの言葉に瑠璃色の瞳が瞬いた。
「うん」
近すぎるマルコの顔に頬を染めながらも頷くと笑顔を浮かべた沙羅。
マルコはその表情を嬉しそうに眺めると、沙羅の手を取りモビーディックへと戻った。
モビーディックに帰ってきたマルコは、一時間後に隊長達に集合をかけ、自身はそのまま図書室に向かった。
『ヒョウと申します』
男の名前がどうしても引っかかった。