第15章 ハレム島に巣くう闇
その反応にヒョウは“やはりな”と確証を得ると、双眼鏡を受け取り、改めてマルコ達を観察した。
白ひげ海賊団、一番隊隊長、不死鳥マルコ。
優劣はないと言われている十六人の隊長の中でも、その存在感は圧倒的で、実質的なNo2とも言われている。
賞金額は10億ベリーを超え、その後も天井知らず。
戦闘力、知力、決断力、どれを取っても厄介な存在だった。
鬼より恐いとも噂される男だが・・・。
ヒョウは沙羅を愛おしそうに見つめるマルコを見つめた。
“・・・不死鳥の女か・・・”
ヒョウの口元が弧を描き、猫が鼠を弄ぶ時のような残酷な感情が湧き上がった。
瞬間、双眼鏡の中のマルコがこちらを振り返った。
“!!”
その凄まじい殺気を含んだ目にヒョウは思わず双眼鏡を外した。
お互い、肉眼で見えるはずはない。
それでも、今にも飛びかかってきそうな視線に本能が反応した。
ククククク・・・とヒョウは笑った。
さすがは白ひげ海賊団のNo2だ。
いい勘をしていると思わずにはいられなかった。
早くマルコの怒りに震える顔を見てみたい。
ヒョウは沙羅を奪われた時のマルコの顔を想像し、興奮せずにはいられなかった。
沙羅とトシの会話に時々相槌を打ちながら、行き交う人々を観察したり、さり気なく沙羅を眺めているマルコ。
「美味いらしいですよ、その店」
「パエリアかぁ、私も食べてみたいな、今から行かない?」
そう言いながら自分を見た沙羅に、マルコが応じようとした時だった。
“!!”
マルコは自分に向けられた凄まじい悪意を、感じ取った。
鋭い目が悪意の元を追うように睨む。
「・・・」
全身の毛が総毛だつような、常軌を逸した悪意をマルコに与えるとは只者ではない。
僅かの間の後、横にいたイゾウが声を発した。
「・・・消えたな」
「あぁ」
応える声は硬い。
「マルコ?・・・」
二人の只ならぬ様子から何かを察した沙羅は少し不安げに言った。
呼ばれたマルコは、少しだけ表情を和らげると『大丈夫だ』と言った。
「え?どうかしましたか?」
何も気づいていないのはトシのみ。
そんなトシに隊長二名は“まだまだだな”と苦笑いを浮かべ席を立った。
「行くぞ、沙羅」
イゾウに呼ばれた沙羅は不思議そうな表情になる。