第15章 ハレム島に巣くう闇
その表情は店主や情報屋の男心をくすぐり、口を軽くさせるには抜群の効果を発揮した。
それでもゾイドの情報は少なく、しかも一様に噂と違って良心的な場所代を納めているだけで、他の海賊や山賊の脅威もなく助かっていると口を揃えて言う始末だった。
「どう思う?」
気怠げにカフェテラスの椅子にもたれるイゾウ。
「作為を感じますね、誰かが上手く制御して作りあげているような」
対して椅子にしっかりと座り背筋を正している沙羅。
そこへ同じように情報収集をしていたマルコとトシがやってきた。
「沙羅さん!」
尻尾があったら、ぶんぶんと降っているに違いない。
満面の笑顔で走り寄り、悪びれなく沙羅の隣に腰を下ろす。
無論、マルコとイゾウの氷のような視線に気付くはずもなく、話し出したトシ。
沙羅も弟のような存在のトシの話を相槌を打ちながらにこにこと聞いていた。
その様子を遠く離れた場所から双眼鏡で観察している男がいた。
「どうすか?ヒョウさん」
呼びかけられても返事をすることなく、食い入るように沙羅の顔を、体を見る。
「悪くない・・・」
そう言いながらも、内心、その美しさに笑いが止まらない。
敬愛するゾイドの慰み者として申し分ない。
今、ゾイドの一番のお気に入りのかやも美しい女だが、その比ではない。
加えて、毎日犯されるように抱かれているかやの体は長くは保つまい。
さらにフェイクが死んだ今、かやがその事実を知れば自害しかねない。
そうなれば気に入る女ができるまで毎日死体を処理し、新しい女を調達しなくてはならない。
さすがに毎日毎日女が行方不明になれば、せっかく作り上げた金のなる木のハレム島に悪い噂が立ち、旅行客が遠退いてしまう。
そうなる前に、ヒョウは新しい女を捜していた。
しかし・・・、ヒョウはマルコを視界に入れた。
“あれは・・・”
「先程、確か着物の女男といたと言ったな?」
双眼鏡からは視線をずらさずに言うヒョウ。
「そうっす、いませんか?」
そう聞いた男にヒョウは無言で双眼鏡を手渡した。
不思議そうにしながら双眼鏡を覗いた男は、すぐにイゾウを確認した。そして、その横いる男、マルコに気がついた。
「・・・不死鳥マルコ・・・」
恐怖に思わず、声が震えた。