第15章 ハレム島に巣くう闇
リゾート地としても知られるハレム島。
島に足を踏み入れた沙羅は、その予想外の光景に目を瞬かせた。
右にも左にも水着のような格好の女や、上半身裸の男が行き交う。
それだけなら、夏島のリゾート地だからと理解できるのだが、昼間から堂々と客引きをする女達。
そしてその女達と消えていく男達。
夜の街がそのまま島になったような光景に戸惑う沙羅。
「沙羅、ぼさっとしてんじゃねぇよ」
固まってしまった沙羅の腕を引き、歩き出すイゾウ。
『すみません』と小さく言いながらも、視線は漂うばかり。
その少女のような反応にイゾウは“くつくつ”と笑った。
予想はしていたが、この光景は沙羅には強烈な洗礼だったらしい。
「イゾウ隊長、笑いすぎです」
歩きながらも笑い続けているイゾウを睨み上げるも、その身長差と可愛らしい声のせいか説得力にかけた。
「悪りぃ悪りぃ、!沙羅」
笑いを収めながらも、沙羅に“わざと”ぶつかってこようとした男を牽制しながら、自身に引き寄せるイゾウ。
イゾウ自身もハレム島は始めてではあるが、噂通りの治安の悪さに、気を引き締める。
沙羅のような女はこのハレム島では格好の餌食だ。
今の男もぶつかる振りをして、触ろうとしていたのだから。
ハレム島とはよく言ったものだ、とイゾウは感心半分、呆れ半分に思った。
男にとって天国のような島、ハレム。
この島は沙羅も感じたように、朝から晩まで女が男を楽しませる島なのだ。
無論治安は良くない。
女が一人で歩こうものなら、客引きと間違われるか、最悪、そのまま暗がりに連れ込まれ犯されるかだ。
それでも、美しい街並みや砂浜はリゾート地の雰囲気を醸し出す。
その上、この島に強姦と言う犯罪はない。
この島にわざわざ来る女は、あらゆる快楽を楽しむ島だと承知の上で訪れ、むしろ、それを楽しみに来ているのだ。
だからこそ、リゾート地として成り立っているのだろう。
イゾウは自然に視線を巡らせながら、島の配置を頭に叩き込んで行く。
時折、酒場や情報屋に入り、情報も収集する。
その時は必ず沙羅の腰に手を回し、抱き寄せた。
一番の目的は危険回避だが、体を密着させ腰をさすれば、イゾウを男として全く意識していない沙羅も恥ずかしそうに頬を染める。