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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第14章 ハレム島へ向けて


 二人が買い物を楽しんでいる頃、イゾウは静かにライを見送っていた。

ライの身を案じ珍しく引き止めたイゾウ。
どう考えても悪魔王ゾイドが、依頼を失敗したライをそのままにしておくとは思えなかった。
そのイゾウに対してライは笑って言った。
『らしくないっすね、イゾウ隊長』
『あぁ?!』
威圧するように声を荒げたイゾウにライは笑った。
『やっぱ、イゾウ隊長格好いいっすよ』
『・・・』
脈絡のない会話に頭痛を覚えつつ、それでもおしゃべり好きの可愛い隊員の旅立ちに、黙って先を促した。
するとライはやはり勝手に話し出した。
曰く。
短い間だったが悪くなかった。
イゾウのことを男として尊敬してた。
十六番隊でよかったなどなど。
聞いているこっちが恥ずかしくなるくらいに褒めちぎられ、イゾウは柄にもなく照れ笑いを浮かべた。
引き止めてくれた事も嬉しく思っていた。
しかし、暗殺者として生きる自分にも誇りがあるとライは告げた。
そう言われては、イゾウもこれ以上引き止めることは出来なかった。
『二度と俺の首は狙うんじゃねぇぞ』
『気をつけろ』とか『元気でな』とは言わなかった。
生きていなければ、首は狙えない。
だから“生きていろ”と伝えたかった。
ライは、にやりと海賊のように笑いそれに応えた。
そして、モビーディックにかかった梯子に足を踏み出した。
『隊長、俺は断然イゾウ隊長がお似合いだと思いますよ』
『?!』
『遠慮なんてらしくない、いっそ押し倒して喰っちまえばいいじゃないすか』
『!!』
思わず、目を見開いたイゾウ。まさか気づかれているとは思わなかった。自分の気持ちを隠すのは得意だ。隊長達ですら、マルコとサッチ以外は沙羅をからかって楽しんでいるとしか思っていないのに。
『うまそうっすよね、沙羅副長』
そんな動揺したイゾウにとどめの一言を残し、ライは甲板から一気に飛び降りた。
『ライ!』
『じゃ!イゾウ隊長、お世話になりました!』
勢いよく一礼すると、振り返ることなく去っていくライ。


「・・・」
その背中を目に焼き付けるように、それ以上言葉をかけることなく見送ったイゾウ。

“生き抜けよ”

心の中で祈るように呟いた。
 その翌日、モビーディック号は予定通り出向をした。
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