第14章 ハレム島へ向けて
ホルターネックの真っ白いマキシ丈ワンピースに
大胆なサイドスリットのカラフルなフラワープリントのドレス、
総レースのトップスにラフなショートデニム、
さすがにハルタだ。
どれもリゾート地に相応しく、沙羅に似合うものばかりだった。
僅かにハルタに嫉妬心を覚えたが、ハレム島航行の指揮を取るマルコに時間がないのは事実。
今もやっと、数日ぶりに自由な時間を手に入れたくらいだ。
「変・・・かな?」
並んでいた服を見ても、特に反応のないマルコにかけられた声。
その声のトーンだけで、マルコにはこれらの洋服を沙羅が気に入っていることがわかった。
「いいんじゃねぇか、俺は好きだよい」
そう言えば案の定、嬉しそうに笑い『本当?よかった!』と言う沙羅。
「後は・・・それだな」
そう言ってもう一度沙羅の姿を見たマルコは、フィッティングの外に出ると店内を見回した。
すると不安そうにこちらの様子を伺っている店員と目があった。
店員はマルコの視線に気付くと、気まずさの中に僅かに嫌悪感の滲ませた表情を慌てて逸らした。
店員の反応も無理はない。
育ちのせいかハルタは、一見海賊には見えない。
無論沙羅は言うまでもない。
対してマルコは根っからの海賊で、見るからに危険な雰囲気を醸し出し、オヤジの誇りを堂々と誇示している。
下手をすれば一般人に絡む海賊がいると通報されかねないだろう。
マルコは自分の心の底に沈んでいる劣等感にも似た感情を思い出さずにはいられなかった。
沙羅が少女だった頃には、時々誘拐と勘違いされたり、『悪い奴らと付き合ってはいけない』と諭す大人もいた。
大人になってからは沙羅に諭す者はいなくなった。
が、代わりに聞こえる蔑む声。
『清純そうに見えて、海賊の情婦とはねぇ・・・』
『虫も殺さぬ顔をして、恐ろしい・・・』
自分が何と言われても気にならない。
だが自分といることで沙羅が悪く言われるのは堪らなく悔しかった。
マルコは睨み返したくなる気持ちを必死に抑え、店員呼んだ。
そして今着ている物以外全て購入することを伝え、さらにいくつか品物を持ってきて欲しいと伝えた。
店員は露骨に態度を変え、満面の笑みで品物を取りに向かった。
その後マルコの見立てた服に沙羅が心を踊らせたのは言うまでもない。