第14章 ハレム島へ向けて
その数日後、
変わり果てた姿のライが港に浮いていた。
余程激しい拷問を受けたのだろう、顔は判別できない程に腫れあがり、体のあちこちが原形を止めていない。
それでも、その口元は不敵に結ばれており、ライが何も語らなかったことを示していた。
『家族は売らねぇよ』
それが、ライが発した最後の言葉だった・・・。
薄暗い部屋に女の喘ぐ声が響く。
その部屋に躊躇することなく入ってきた男。
「ゾイド様」
「ヒョウか」
女を喘がせながら、ゾイドは応えた。
「れいの男ですが、口割らないまま死んでしまったようです」
「・・・」
ゾイドの動きが止まり、女の口から悲鳴が漏れ・・・ボキッと何が折れる音がした。
ぴくりともしなくなる女。
「片づけろ」
「はい」
表情を一切変えることなく、淡々と女の死体を担ぎ去っていくヒョウ。
しかし、ふと足を止め振り返った。
ゾイドの欲はまだ満たされてはいない。
代わりの女を呼ばなくては、そう思ったヒョウは口を開いた。
「かやを呼びましょうか?」
するとゾイドは返事の代わりに、ゾクリとするような笑みを浮かべた。
ヒョウはその笑みを薄笑いを浮かべて眺めると、『では、すぐに』と言い、今度こそ部屋を出た。
部屋を出たヒョウは、ちょうど通りかかった船員を呼び止めた。
「かやをゾイド様の元へ連れて行け」
「え?かやですか?しかし、今朝散々・・・」
言葉を濁す船員にヒョウの目が細められた。
「今朝だろうが先程だろうが関係ない、ゾイド様がお召しなのだ、それとも・・・あの女を庇うつもりか?」
柔らかい物腰のままに、目だけが獰猛な肉食獣のように危険な光を放てば、一介の船員である男は首を激しく横に振り、即座に走りだした。
部屋に着けば、横になったままぼんやりとしているかやを無理矢理立たせて引きずるように連れて行く。
その掴まれた腕や体には明け方まで散々ゾイドのに弄ばれた赤や紫の跡が残っていた。
船員は僅かに罪悪感を感じつつも、かやをゾイドの部屋へ押し込んだ。
逃げるように去る船員の耳に、
かやの悲鳴が、
微かに聞こえた。