第14章 ハレム島へ向けて
困り顔の沙羅に歩み寄り、下から上目遣いに言おうとした。
『ねぇ、似合ってるから着てよ!』と。
しかし、そのハルタの背後から、不機嫌な声がした。
「色は悪くねぇが沙羅にはその格好は無理だよい」
「「マルコ!」」
ほっとしたように言う沙羅。
不機嫌全開のハルタ。
マルコはそんな二人の差にククッと笑うとハルタを鋭く睨んだ。
無論負けじと睨み返すハルタ。
が、やはりマルコは一枚も二枚も上手だった。
「ハルタ、てめぇこの前の始末書がでてねぇよい」
「!!」
「期限は昨日までだが・・・特別に“今日の夕方”までなら待ってやる」
「・・・」
顔色を変えたハルタの意識は最早、始末書を今日の夕方までにどうやって仕上げるかだ。
「ごめん、沙羅!後は自分で決めて!」
辛うじて、マルコに決めてもらってと言わなかったのはハルタの小さな抵抗だ。
凄まじい勢いで去っていくハルタを満面の笑みで見送ると、振り返ったマルコは獲物を見るような目で沙羅を見つめた。
“さて、どうしてやろうか”
自分ですらじっくりと見たことのない部分を、ハルタ、いや男の前でさらしたことが気にくわない。
透き通るように白い肌も、
華奢な肩も、
浮き出る鎖骨も、
僅かに見える胸元も、
沙羅の全ては、他の誰にも見せたくない。
恋人ではない自分がそう思うのは理不尽ではある。
が、生憎そこは全く気にしない、気にするつもりもない。
海賊は自由。
自由こそ、海賊。
と、堂々と開きなおっているマルコは伏し目がちな沙羅を見下ろした。
マルコの視線が自分を食い入るように見ていることに気がついた沙羅。
“そんなに呆れなくても・・・”
戦いに身を置く者としては、思いのほか伸びなかった身長に、筋肉の付きにくい体。かと言って情報収集の際によく見かける夜の女達のように魅惑的な体を持ち合わせているわけでもない。
どっちつかずの貧相な体。
そんな自分がこんな露出の激しい格好をするのは見るに堪えないことは、一番良くわかっている。
「わかってる!似合わないのは自分が一番わかってるから!」
恥ずかしさといたたたまれなさに包まれた沙羅は語尾を強めて言った。
そしてマルコの視線から逃れるように、フィッティングルームに戻るとドアを閉めようとした。