第14章 ハレム島へ向けて
ハレム島へと進路を取ったモビーディック号は物資補給のため、小さな島へと上陸した。
ログが溜まる前に出発するために、弾丸一泊上陸だ。
それでも、幸運にも何の当番にもあたらなかったクルー達は我先にと降りていく。
その中に、ハルタに連れられて降りていく沙羅の姿もあった。無邪気な笑顔を浮かべるハルタに、先日までの敵意は微塵もない。
「ハルタの奴、すっかり懐いたな」
あきれ顔のラクヨウ。
事件以来、手の平を返したようにハルタは沙羅に構うになった。
イゾウ曰く、『あの力見せられちゃくだらねぇ嫉妬心なんざぁ、吹っ飛ぶさ』だそうだ。
その言葉通り、ハルタは沙羅の実力を認めたらしい。まるで姉弟のような懐きぶりに、初めは唖然としいた隊員達もすっかり見慣れてしまった。
そして・・・
沙羅の部屋に日々遠慮なく出入りしていたハルタ。
リゾート地であるハレム島に着ていく服がないと知るや否や、『僕が選んであげるよ!』といい、冒頭に至ったのだった。
ハルタに引っ張られるように連れて来られたのは、リゾート地に相応しい華やかな柄や、はっきりとした色合いの服が並ぶお店。
その試着室で、ハルタの着せ替え人形と化した沙羅は、恥ずかしさに頬を染めた。
「こ、これはちょっと・・・」
そう言うのも無理はない。
鮮やかな青色のチューブトップの見せブラに、緩めの白いショートパンツ姿の沙羅。
試着室のドアから上半身だけを出して、ハルタに否の意思表示。
が、もちろんハルタが折れるはずはない。
ドアを押し開けるとまじまじと眺めると、ニコニコと笑顔を浮かべた。
「え?何で?似合ってるよ、リゾート地にいつもの地味な服で行くつもり?」
「そ、そうじゃないけど・・・ちょっと・・・」
「ちょっと何?」
言葉を濁した沙羅に詰め寄るハルタ。
沙羅にしてみれば、こんな露出の激しい服装は裸同然だ。
いくらリゾート地とはいえ、こんな格好で外など一歩も歩けそうになかった。
しかし、せっかく仲良くなれたハルタに直接否とは言えない沙羅。
対するハルタも、沙羅が“全般的に”押しに弱いことをよく理解しており、後一押しで首を立てに振らせることができると内心黒い笑顔を浮かべていた。