第13章 新世界を一人で生き抜いた女
白ひげを訪ねたマルコは事の詳細、自分の胸の内を全て吐露した。
『俺は・・・フェイクを家族だと思ってるよい』
そう言ったマルコに白ひげは大きく頷き、マルコの背中押すように言った。
「おめぇの好きにしやがれ、ケツくらい拭いてやらぁ」
「!!」
言外にゾイドとの全面対決も辞さないと言う白ひげに、マルコは『よい』と照れたように笑った。
その晩。
マルコは2階のデッキで一人、酒を飲んでいた。
思い返すのは、悪魔王ゾイドの隠された悪の拠点、そして男にとって天国のような島として知られるハレム島へ向かうと告げた時の隊員達の反応。
事情を全く知らない隊員は単純に、ハレム島に夢を膨らませ大騒ぎ。
対して今回の騒ぎの原因がフェイクとライと知る者の不満の声。
白ひげは理解してくれたが、彼らが仲間の命を狙ったのは事実。
攻撃で怪我をした者も少なくない。
もちろん、よく思わない奴もいる。
特に、フェイクが問題を抱えていたと知らない者は納得し難いだろう。
ハレム島へ向かう目的が、黒幕がゾイドだという証拠集めだけでなく、かやという女の救出も兼ねていることを。
マルコとしては、いきなりゾイドに殴り込みをかけにいくつもりはない。真犯人かどうかの確証もなく一戦を交える程、気軽な相手ではない。
だからこそ、フェイクが人質を取られたために凶行に及んだのだという証拠が欲しかった。
いや、それはただの理由づけなのかもしれない。
マルコは、フェイクの最後の言葉がどうしても気になっていた。
『か・・・や・・・すま・・・な・・・』
もし、本当に許嫁ならばさぞかし心残りであろう。
もし、自分が沙羅を残して死んだら、
もし、沙羅の命と引き替えに仲間を殺せと言われたら・・・。
考えずにはいられなかった。
絞り出すように、女の名前を呼んだフェイクの声が耳から離れなかった。
正直、ゾイド黒幕の証拠集めが先にあるのか、それともかや救出が先にあるのか、自分でもわからなかった。
判断を誤れば多大な犠牲が出る。
それ程の相手だというのに、個人的な感傷と言われても仕方ない自分自身の判断に自信が持てなかった。
そんなマルコの横に、何も言わずに腰を下ろした沙羅。
暫く、二人は会話を交わすことなくただ、並んで座っていた。
酒をちびりちびりと飲むマルコ。
静かに月を眺めている沙羅。