第13章 新世界を一人で生き抜いた女
ゴォ~と音を立てて沈んで行く島をモビーディックから呆然と眺めるクルー達。
マルコ達もそれを視界に入れながら、しかし、事の真相を明らかにすべく、ライを問い詰めていた。
最初に語った通り、二人が暗殺者であることに嘘はなかった。
ただ、決定的に違ったのは、依頼を受けるか否かを選択できたかどうかだった。
ライは単純に暇だったから請け負った。
対してフェイクには、選択権はなかった。
『俺も詳しくは聞いてないが・・・』
と前置いた上でライは言った。
“かや”というのは許嫁ではないか、と。
そして、その“かや”という女はライ達に仕事を依頼した海賊の船長“お気に入り”らしい。
フェイクはその“かや”を助けるために働いていたのではないかと、ライは告げた。
「つまり・・・人質ってこと?」
「お気に入りなら、その女と船長がグルって落ちもあるじゃね~の?」
「は?何それ?女に甘いわりに、随分な言い方じゃない?」
「だから、可能性の話だって!」
サッチの、言葉に噛みついたハルタ。
そのやり取りを横目にマルコは口を開いた。
「で?その海賊ってのはどいつだよい?」
「・・・」
覚悟していたとはいえ、ライはすぐには答えられなかった。
別に依頼人の秘密は死んでも守ると言うつもりはない。
ただ、恐ろしかった。
その、海賊の名を口にするのが。
だが、隊長達に囲まれ睨まれるのも居心地のいいものではなかった。
ライは小さく溜息をついた。
「・・・イド」
「あ?」
「悪魔王、ゾイド」
「「「!!」」」
その名前に、居合わせた全員の顔色が変わった。
その名を聞けば、新世界の誰もが逃げ出すと言われているゾイド。
この大海賊時代において、白ひげやカイドウと並ぶ、いや、その残虐さで言えば右に出る者はいない程、厄介で、関わりたくない相手だった。
「マジかよ」
「厄介だな」
サッチと、ビスタが言った。
「血を、見ることになるな」
「でも、売られた喧嘩は買うでしょ」
イゾウの言葉にハルタが笑った。
対するマルコは終始思案顔。
それでも、何かを決したらしく徐に口を開いた。
「話はわかった、後はお前ぇの処分だ・・・イゾウ、任せてもいいかよい?」
それは暗に許しを意味していて、イゾウは微かに笑った。