第13章 新世界を一人で生き抜いた女
『円陣を崩すんじゃねぇ!!』
崩せば一気に殺られる、とわかっていた。
自身は負傷しながらも、家族を守るには今どうすべきかマルコはわかっていた。
死ぬつもりはない、だが、無傷で切り抜けられるほど暗殺者のフェイクとロイは甘くはない。
力の入らない体を震わせながら、前の敵を倒し、右からの攻撃を交わし・・・。
「っ!!」
新たなフェイクの剣が振り下ろされた。
・
・
・
燃え上がるような痛みを覚悟した。
“・・・?!”
そのマルコの前に、
水の壁が
突然現れた。
そびえ立つ“それ”から微かに聞こえる音。
しゃら・・・シャラ・・・
「マルコ!皆!助けにきた!助けに来たよ!」
「「「!!」」」
どこから来たのか。ちょうどフェイクとロイが立っている所と反対側に現れた沙羅とハルタ。
そして沙羅は躊躇することなく、コロシアムの闘技場と化したそこへ飛び降りる。
落下しながら好戦的な笑みを浮かべた沙羅。
「皆・・・伏せて!!」
叫ぶと同時に右手を、円を描くように動かした。
瞬間、衝撃波のように水が円盤状に広がり、本物フェイクの指示を受けてから動くフェイク軍団を容赦なく襲った。
その破壊力は凄まじく白い壁が、いや島が上下に分断され一瞬浮いた。
「す、・・・すげぇ」
思わず呟いたのは、先程沙羅に悪態をついたクルー。
降り立った沙羅は、残っていたフェイク軍団を次々に倒していく。
「まじかよ」
始めて目にした沙羅の強さに度肝を抜かれるクルー達。
そんなクルー達にイゾウは言った。
「お前ぇら、本気で沙羅が夜伽だと思ってたのか?」
「あ、いや、・・・その・・・」
言葉に詰まるクルーに、イゾウはくつくつと笑った。その顔から、突如笑みが消える。
射貫くような眼差しがクルーを見た。
「よく見とけ、あれが新世界を一人で生き抜いた女だ」
その冷ややかで淡々とした声に、クルーの背中にぞくりと寒気が走る。
「お前さん、一人で新世界生き抜けんのか?」
思わず首を横に激しく降るクルー。
すると、イゾウはその耳元に囁いた。
「二度とくだらねぇこと言うじゃねぇ」
その瞬間沙羅の剣が、クルーに襲いかかろうとしたフェイクを斬り倒した。
クルーは自分の心に誓った。
“二度と馬鹿なことは言うまい”
と。