第13章 新世界を一人で生き抜いた女
ライとフェイクが海賊専門の暗殺者で、
白ひげ海賊団の崩壊を企む、ある海賊の依頼で白ひげ海賊団の隊長達を殺しに来たこと。
フェイクは能力者で、自分のコピー“フェイク”を無限に作れること。
自分は人を騙すのが得意な、嘘つき“ライ”であること。
そこまで話したところで、フェイクが口を挟んだ。
「ライ、喋りすぎるな」
すると、ヘラヘラと笑いながら、動きをピタリと止めていたフェイクの集団を縫うように移動し始めた。
追いかけようとしたクルーをイゾウが制したのと、フェイク集団が動き再開したのは同時だった。
「っ・・・さすがはイゾウ隊長だ」
自分を追わせて円陣を崩そうとしたライは舌打ちした。
それでも、飛ぶように階段状の壁を駆け上がるとフェイクの隣に立ち、マルコ達を見下ろした。
「逃がさねぇよい」
そのまま去って行こうとする二人を、獣化し始めたマルコが追いかけようとした。
「!?」
いつもは自身の意のままに操れる蒼い炎は、僅かにくずぶるように揺れるのみ。
不死鳥となり自由に空を飛び回れるはずの体は、人間のままだった。
それでも冷静に覇気をまとい、襲いかかってきたフェイクを吹っ飛ばす辺りはさすがに隊長だ。
そんなマルコにかけられた言葉。
「さすがマルコ隊長、ですがそこではあまり動かないほうがいい」
淡々と言う姿に殺意は感じられない。
むしろ、僅かながらもマルコを心配しているようにさえ聞こえた。
それに違和感を覚えるも、マルコは自身の体から力が抜けていくのを感じ、膝を付き添うになる。
「マルコ!」
イゾウの声よりも早く、弾丸がフェイクの一人を突き抜けた。
「っ・・・っく」
脂汗がにじみでる。
「手遅れのようですね、ここは一日数時間だけ海に浮かぶ島なんですよ」
「・・・?!」
「そして、ここの珊瑚は地上に出ると呼吸するように、海水を出すんです」
海水は悪魔の実の能力者にとっては致命的だ。
僅かに触れるだけで体に力が入らなくなる。
その海水を、ここにいる珊瑚は目に見えない細かいミスト状にして吐き出していたのだ。
それを酸素のように吸い、知らぬ間に体全体で触れていたマルコ。だからこそ、不死鳥になれず、じわじわと力が抜けていったのだ。
悪魔の実の能力を封じられ、立つことがやっとのマルコに数十人のフェイクが襲いかかる。
無論、イゾウやクルー達も助けに行こうとするがマルコ自身が、制す。